2006 Fiscal Year Annual Research Report
人工生体膜におけるラフト構造膜内輸送制御システムの提案
Project/Area Number |
18059013
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇治原 徹 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助教授 (60312641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手老 龍吾 分子科学研究所, 極紫外光研究系, 助手 (40390679)
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Keywords | 脂質二重膜 / 相分離構造 / バイオデバイス / 半導体デバイス |
Research Abstract |
生体膜は数種類の脂質からなる多元系で、体内の環境に応じて「相分離」し、ドメイン構造を形成する。最近の研究で、このドメイン構造が膜タンパク質の凝集場所としての役割を果たしていることが明らかになっている。本研究では、この体内現象を模倣し、半導体デバイス上に展開した生体膜において、様々な外的刺激を印加することで相分離を誘起し、ドメイン構造の形成・移動の制御を行うことを目的とした。 脂質分子に、DMPC/DOPC/TexasRed-DPPE(=50/50/1)を、基板には、化学酸化を施したSiO_2/Si基板を用いた。形成法は、緩衝液にベシクル状の脂質を分散させ、それをSi基板上に滴下し、45℃で20分間静置することで基板上へ脂質二重膜を展開した。その後、温度制御しながら、相分離構造の観察を蛍光顕微鏡により行った。また、観察と同じ水銀ランプを用いて、本研究では脂質膜へ光照射による刺激を行なった。 これらにより、次の結果を得た。まず、脂質膜に局所的に光照射を行った後に、降温し相分離させたところ、光照射位置に優先的に相分離ドメイン構造が形成されることを見出した。また、この現象が蛍光脂質を介した局所的な温度上昇によるのもで、局所的な熱膨張を緩和するためにサイズの異なる脂質分子が分配されたためであることを明らかにした。さらに、光照射を繰り返すことで、その場でドメイン構造の位置やサイズをコントロールすることに成功した。 これらの結果は、光や熱を与えることで、生体膜の局所的な組成分布制御を可能にすることを意味する。このような、生体膜を外部刺激により制御する研究例はこれまでほとんどない。しかも、本制御法はリングラフィーなどによる静的制御と異なり、その場でパターニングする動的制御であることも特徴である。
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