2007 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の非対称性自己複製を誘導する細胞外分子の探索
Project/Area Number |
18060011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
依馬 秀夫 The University of Tokyo, 医科学研究所, 産学官連携研究員(特任准教授) (50344445)
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Keywords | 再生医学 / 移植・再生医療 / 発生・分化 / シグナル伝達 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
造血幹細胞の運命の選択肢は自己複製、分化、アポトーシスに大別される。申請者らは造血幹細胞をstemcell factor(SCF)とthrombopoietin(TPO)存在下で培養系すると、非対称性自己複製分裂をある頻度で起こすことを見出した。本研究ではこの培養系を応用して、分裂時の運命決定に影響を及ぼす細胞内外のシグナルを明らかにすることを目的とした。造血幹細胞は生体内では造血組織のある特定の部位(ニッチ)に局在し、ニッチからのシグナルによって制御されていると考えられた。そこで、ニッチに発現されていると想定される因子について検討した。Wnt3aはSCF存在下で造血幹細胞の対称性自己複製を誘導すると報告された。そこで、精製したWnt3aとWnt5aの造血幹細胞に対する作用を解析した。Wnt3aには細胞質に局在するβ-cateninを核内へ移動させ、Lef/Tcf転写活性を上げる作用があったが、Wnt5aにはその作用がないことが明らかとなった。しかし、Wnt3aには造血幹細胞の分裂を誘導する作用はなく、SCFを加えても同様であった。一方、SCF+TPOには造血幹細胞のbulk cultureにおいて造血幹細胞活性を上昇させる作用があり、そこへWnt3aを加えてもその作用に変化は認められなかった。これらの結果はWnt3aには造血幹細胞の自己複製を誘導する作用がないことを示している。次に、TGFβシグナルの役割について検討した。通常、生体内で造血幹細胞は休眠状態にあり、Smadシグナルが活性化していることが明らかとなった。また、TGFβ1にはSCF+TPOのシグナルを抑制する作用があることが明らかとなった。一方、p57^<Kip2>のプロモータ下にGFPを発現するトランスジェニックマウスを作成した。このマウスはまだ解析中であるが、造血幹細胞のニッチ細胞の同定に役立つものと期待された。
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