2007 Fiscal Year Annual Research Report
MT1-MMPによる細胞-細胞外マトリックス間のクロストーク制御機構の解析
Project/Area Number |
18060015
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 博 Kanazawa University, がん研究所, 教授 (00115239)
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Keywords | MT1-MMP / FAK / ERK / 細胞接着斑 / 細胞運動 / ターンオーバー / 細胞外基質 / タイムラプス |
Research Abstract |
我々は膜型マトリックスメタロプロテアーゼMT1-MMPは細胞外基質上での細胞運動を促進することをこれまでに報告しているが、その分子メカニズムは不明であった。細胞は細胞外基質にインテグリンを介して接着することによりExtracellular Signal-Regulated Kinase(ERK)などのリン酸化(活性化)が起こるが、MT1-MMPを阻害すると数時間後にはERKのリン酸化が減弱するとともに、細胞運動が抑制された。すなわちMT1-MMPは持続的なERKの活性化および細胞運動に必須であった。タイムラプス分析で細胞運動過程を解析したところ、細胞は細胞外基質を分解しながら、運動先進部分に細胞接着斑を集積させ運動していた。一方、MT1-MMPを阻害すると細胞接着斑は細胞周囲に均一に肥大化して分布していたすなわちMT1-MMP阻害により細胞接着斑周辺の細胞外基質の分解が抑制されたため、細胞接着斑のターンオーバーが低下し、その結果としてFocal Adhesion Kinase(FAK)、ERKシグナルが低下したことが示唆された。そこでMT1-MMP阻害分子(MT1-Pex)をFAKの細胞質ドメインと融合させたキメラタンパクMT1-Pex-FATを作成し、MT1-Pexを細胞接着斑にターゲットすることにより細胞接着斑での細胞外基質分解を特異的に抑制することを試みた。その結果、MT1-Pex-FATはMT1-MMPの細胞接着斑における細胞外基質分解を効率よく阻害し、ERKのリン酸化および細胞運動を抑制することに成功した。以上の結果よりMT1-MMPによる細胞接着斑における細胞外基質の分解は細胞接着斑のターンオーバーを促進し、FAK、ERKシグナルを亢進することにより細胞運動を制御していることが強く示唆された。
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