2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパラン硫酸プロテオグリカンによる増殖因子HB-EGFの生理活性制御機構の解明
Project/Area Number |
18060028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩本 亮 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10213323)
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Keywords | 細胞・組織 / 発生・分化 / 増殖因子 / 細胞外マトリックス / 細胞外環境 |
Research Abstract |
HB-EGFはEGFファミリーに属するヘパリン結合性の増殖因子である。我々は最近、細胞外マトリックスヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を発現する細胞において、HB-EGFが細胞表層のHSPGに結合することで、EGFR発現細胞に対する活性が、増殖促進から増殖抑制に転換することを見いだした。さらにHB-EGFのヘパリン結合ドメイン(HBD)を欠失させHS結合能を失わせた変異HB-EGFを発現するノックインマウス(HB^<Δhb>)を作製したところ、このホモマウス(ΔHBマウス)は、HB-EGF KOマウスと同様に、心臓弁形成段階で間質細胞の過増殖を引き起こすことを見いだした。これらは、HB-EGFによる細胞増殖抑制機能発揮における、HB-EGFとHSPGとの相互作用の生理的重要性を、in vitro、in vivoの両面から強く示唆するものである。そこで本研究では、HB-EGFの機能様式としてのHSPGとの相互作用と、これによるHB-EGFの増殖抑制活性への転換という点に着目し、これらを強く示唆する上記の細胞レベル及び生体レベルの知見をさらに詳しく検証することを目的として、(1)培養細胞系を用いた、細胞表面HSPGとの相互作用によるHB-EGFの増殖抑制活性発揮機構の解析、(2)HBD欠失変異マウスを用いた、心臓弁形成過程でのHB-EGFによる細胞増殖抑制におけるHB-EGFとHSPGの相互作用の機構と意義の解析、のin vitro、in vivo両面から研究を行っている。 本年度の進捗状況は以下の通りである。 1)In vitro系の解析 HSPGに結合したHB-EGFの活性を評価する実験系として、HSPGを内在性に豊富に発現するVero細胞にHSPGを介してHB-EGFを結合させ、その上でIL3あるいはHB-EGF依存性に増殖するDER細胞を共培養する系を確立し、HSPG結合HB-EGFは、遊離型HB-EGFの増殖活性とは異なり、EGFR-MAPKの持続的活性化を誘導し、その結果、DER細胞の増殖を停止させることがわかった。現在、さらにHSPG結合HB-EGFの活性を直接評価するため、Cell-free実験系の構築を試みているところである。 2)In vivo系の解析 ΔHBマウスにおける心臓弁での間質細胞過剰増殖の機構を実験的に検証する目的で、この時期の心臓の器官培養系を立ち上げた。この系において、KO由来の培養心臓における間質細胞の増殖昂進及び外来性HB-EGFによるこれらの異常のレスキュー、野生型培養心臓におけるHS合成阻害に伴う細胞増殖昂進を確認している。この実験系を駆使することで、心臓弁形成過程でのHB-EGFによる細胞増殖抑制において、HSPGとHB-EGFが機能的にどのように関わっているのか、さらには、HB-EGFと相互作用するHSPGの同定など、さらに検討していく予定である。
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