2006 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫疾患の病態に関わる胸腺ニッチ構築シグナルの解明
Project/Area Number |
18060030
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松本 満 徳島大学, 分子酵素学研究センター, 教授 (60221595)
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Keywords | 自己免疫疾患 / AIRE / 胸腺上皮細胞 / negative selection |
Research Abstract |
自己免疫疾患が何故、起こるのかという問題と並んで重要な研究課題は、自己免疫疾患の臓器特異性が、一体、どのような要因によって決定されるかを明らかにすることである。本研究では自己免疫疾患における臓器特異性の決定要因を解析することで、胸腺内negative selection nicheの性状を明らかにする。すなわち、AIRE欠損NODマウスではNODマウスにおける本来の標的組織である膵ラ氏島の破壊を認めなくなり、かわって外分泌組織である膵腺房細胞の著明な破壊像を認めた。この病理学的な所見に一致して、AIRE欠損NODマウスは糖尿病の発症に対して抵抗性を獲得していた。AIREを欠損させたNODマウスにおける臓器特異性の変化は、AIREが単に自己免疫病態の発症を規定するのみならず、臓器特異性の決定にも関与していることを明確に示した結果である。したがって、AIRE欠損にともなう臓器特異性変化が胸腺内で、一体、どういったnegative seleetion nicheの変化によってもたらされたかを明らかにすることで、自己寛容の成立機構について貴重な情報が得られるものと思われる。 他方、AIRE欠損RODマウスの血中に存在する自己抗体の対応抗原の一つを同定したところ、膵臓腺房細胞に発現するpancreas-specific protein disulfide isomerase(PDIp)であることが判明した。AIRE依存的自己免疫病態の発症機構として、AIREが胸腺上皮細胞内で種々の末梢自己抗原(peripheral tissue-restricted antigen)の発現を転写レベルで制御している可能性が示唆されている。しかしながら、AIRE欠損NODマウス胸腺におけるPDIpの発現は低下しておらず、このことからAIRE依存的自己免疫病態の発症にはAIREによるPDIp転写制御以外のメカニズムの存在が想定された。
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