Research Abstract |
我々は既に,ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)δのノックアウト(KO)マウスを作成し表現型を解析したところ,上皮増殖因子受容体(EGFR)や腫瘍壊死因子-α転換酵素(TACE)のKOマウスの表現型と酷似していることを見出している.更なる解析により,CDGKδがプロテインキナーゼC(PKC)の活性抑制を介しEGFRのシグナル伝達(セクレターゼ(TACE)を活性化する)を正に制御することにより,細胞外環境を変化させ,個体発生のキーエンザイムの一つとして機能することを明らかにしている. 次に,CDGKδによるEGFR活性の制御機構を明らかにする目的で,CDGKδとの相互作用因子を酵母two-hybrid法と免疫沈降法を用いて検索・同定した.その結果,DGKδのC末領域とreceptor for activated Ckinase 1 (RACKI)のC末約半分(WD repeat 5-7)が相互作用すること,更に,DGKδはRACKIをエンドソームヘリクルートすることが明らかになった.また,DGKδはsterile α motifドメインを介してポリマーを形成し,そのポリマー形成が細胞内局在性を制御することも見出した. 他の増殖因子受容体とDGKδの関連を検討した.高濃度の細胞外グルコースにより,CDGKδの活性と細胞内局在性が制御されること,また,DGKδによってPKC活性が抑制され,その結果,インスリン受容体活性が正に制御されていることが判明した.そして更に,2型糖尿病患者の骨格筋中ではDGKδのmRNA及び蛋白量が減少していることを見出した.また,CDGKδのKOマウスは,骨格筋組織中のDG量の増加に伴い,脂肪褥の増加,グルコースの取り込み能の低下,インスリン抵抗性の増大など,2型糖尿病様の表現型を示し,DGKδが本症発症、増悪化の新たな鍵酵素である可能性が高いことが明らかになった.
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