2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18060040
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
穂積 勝人 東海大学, 医学部, 助教授 (30246079)
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Keywords | Notch / NotchL / 胸腺 / 膵臓 |
Research Abstract |
報告者はこれまで、種々の未分化細胞の系列決定期に機能することが知られるNotchシステムの中で、分化環境要因としてのNotchリガンド(NotchL)の役割について解明すべく、2つのNotchL、Dll1とJagged1の誘導型遺伝子欠損(floxed)マウスを樹立し、解析してきた。本研究では、胸腺と膵臓での細胞系列決定おけるNotchLの役割について明確にすることを目的としている。 本年度は、胸腺におけるT細胞分化誘導に寄与する分子について、主として抗NotchL中和抗体を用いて解析を行った。Notch1欠損マウスの解析から、Notch1を介するシグナルがT細胞分化誘導に必須であることが報告されている。報告者は、独自に開発したin vitro T細胞誘導系を用いて、NotchLの中で、Dll1およびDll4がT細胞誘導能を持つことを示してきた。そこで、胸腺での生理的NotchLを明確にするため、抗Dll1、Dll4中和抗体を胸腺器官培養系に添加し、その影響を検討した。いずれの抗体も単独添加では顕著な効果は認められなかったのに比較し、両抗体を添加することで、T細胞の分化抑制とB細胞分化の増大が認められた。このことは、胸腺内の支持細胞に発現が認められる両分子が、生理的Notch1リガンドとして機能している可能性を示唆している。現在、Dll1-、Dll4-floxed両マウスを用いて、さらに検討を続けている。 他方、膵臓においては、幹細胞活性を保持することが知られる膵管細胞にJagged1が発現することを見出した。そこで、膵細胞でのCre分子の特異的発現を誘導できるPdx-Cre/ERマウスとJagged1-floxedマウスを交配し、生後にタモキシフェンを投与することによりJagged1の遺伝子欠失を誘導した。その結果、外分泌細胞の形態を示す細胞の一部に、内分泌ホルモン(インシュリン、グルカゴン)を産生する細胞が認められた。このことから、膵未分化細胞から外分泌細胞の系列へと分化する過程でJagged1を介するNotchシグナルが機能し、内分泌細胞系列への分化を抑制している可能性が考えられた。
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