Research Abstract |
[粒界・界面の第一原理計算]同じfcc構造でありながら電子構造や機械的性質が異なるAlとCuの基本的な対応粒界の第一原理計算を行った。Al粒界では,界面の構造乱れに対応してspの価電子密度が局所的に増大し,再構成ボンドが形成される傾向が見られた。Alの共有結合的な電子挙動は,等方的分布のCu 3d電子と対照的で,機械的性質の違いとも合致している。エネルギー密度・応力密度の第一原理計算手法開発に取り組み,Al粒界とCu粒界で,界面構造乱れがエネルギー上昇を生むこと,電子構造の違いから応力密度分布が異なることが判明した。こうした結果から機械的性質について考察した。また,各粒界の第一原理引っ張り試験に着手した。 [溶質や欠陥と粒界の相互作用]Grain subdivisionの機構を検討するため,Alの[001]軸の回転角を増やしていった一連の対称傾角粒界について,Glideモデル,Mirrorモデル,CSLモデルの第一原理計算を行った。各モデルで構造乱れは界面をはさんだ約5Aの領域に存在し,その程度は粒界エネルギーと合致する。全般に転位の配列によるGlideモデルが安定であり,大角領域でCSLモデルが安定になる。転位の吸収・放出の観点から,各モデル間の安定性,遷移エネルギーを検討した。今後,[011]軸回転の粒界を検討するとともに,不純物の効果を探る予定である。 [高密度点欠陥構造の第一原理計算]過去に第一原理計算から得られていた単原子状態の溶質原子のmisfit歪を用いて,二元Al合金の固溶強化による降伏強度増加量の濃度依存性を検証した。最大固溶限まで固溶した二元Al合金を想定すると最も強度が高い合金系はAl-Mn系で,次いでAl-Mg系であると予測された。Al中のFeについては単原子状態だけでなく,Fe-Feダイマ状態で特にmisfit歪が大きく,固溶強化に有効であることが18年度に判明しているが,Al-Fe-X(Xは3d金属)におけるFe-Xの2原子クラスタの第一原理計算を行い,misfit歪を検討した。
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