2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18064003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飛田 博実 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 教授 (30180160)
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Keywords | シリレン錯体 / 配位不飽和錯体 / タングステン錯体 / 転位反応 / 結合活性化 / 挿入反応 / イミノアシル錯体 / π共役系 |
Research Abstract |
(1)配位不飽和シリル錯体上での置換基の1, 2-転位反応によるシリレン錯体生成の中間体 以前報告した標題反応の中間体を単離するために, (p-トリルシリル)タングステン錯体に配位した4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)配位子をルイス酸であるBPh_3で引き抜いたところ, p-トリル基の芳香環内の二つの炭素がタングステンに配位した初めてのη^3-シラベンジル錯体が得られた。この錯体とDMAPとの反応でDMAPで安定化されたシリレン錯体が得られたことから, この錯体が反応中間体であることが確認された。またシリル配位子がSi(OMe)_2Meの場合には, メチル基の1, 2-転位が起こることも見出した。 (2)K^2CN-(N-シリルイミノアシル)タングステン錯体の安定性と反応性 2種類のルートで合成した標題化合物について, 安定性と反応性を調べた。その結果,この錯体は三員環型N-シリルイミノアシル錯体としては初めての室温で安定な錯体であり, 120℃まで加熱して初めてC-C結合活性化を起こすことが分かった。また, ニトリルとの反応ではこれを1分子取り込んで五員環錯体が, 一方イソシアニドとの反応では2分子のイソシアニドと1個のカルボニル配位子がタングステンー炭素結合に挿入しシリル基が酸素上へ転位してη^3-2-アザアリル錯体が生成することを見出した。 (3)ビフェニルユニットで連結されたシリレン配位子を持つタングステン錯体の合成と性質 メチルタングステン錯体と4, 4'-ビス(ジヒドロシリル)ビフェニルとの反応により, ビフェニルユニットの両端に2つのシリレン配位子を持つ二核タングステン錯体を合成した。この錯体の電子スペクトルでは, 最長波長の吸収極大が対応する単核錯体と比較して大きく長波長シフトしていることが確認された。DFT計算の結果, この長波長シフトはLUMOが2つのM=Siとビフエニルユニットからなるπ共役系全体に非局在化していることが原因と解釈できることが分かった。
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