Research Abstract |
5配位15族元素化合物は一般的に三方両錐構造であり二種類の異なる結合種(アピカル結合, エクアトリアル結合)を同一分子内に有するため, 同一の配位子を有していても配位子の結合位置の異なる位置異性体が存在する。これら位置異性体間の性質の解明は, 配位子位置の速い分子内交換反応の存在のため容易ではない。現在, 5配位三方両錐構造化合物の異性化機構はBerry pseudorotation (BPR)とturnstie rotation (TR)という二種類の機構が提唱されている。一般的には異性化はBPRで起こるとされ, TRの存在を現実に証明した例はこれまで無かった。本研究では, 新規三座配位子およびその配位子を有する5配位アンチモン化合物の合成, 構造決定, および異性体間の異性化反応について研究した。三座配位子前駆体である1, 1-ビス(2-ヨードフェニル)-2, 2, 2-トリフルオロエタノールを市販のアニリンから4段階, 全収率55%で合成した。1当量のMeMgBrおよび3当量のn-BuLiを用いることでトリメタル化することが出来, 続いてXy1SbCl_2およびSO_2Cl_2で処理することでクロロスチボランを合成できた。クロロスチボランに対して種々のアリールリチウムを作用させることで, 三座配位子および二つの異なる炭素単座配位子を有する5配位アンチモン化合物を二つの立体異性体の混合物として得た。p-クロロフェニル体は二つの立体異性体共にX線結晶構造解析に成功し, その構造が共に三方両錐構造であることを明らかにした。再結晶によって純粋に単離した一つの立体異性体を用いて異性化反応をおこなったところ, 異性化反応が進行することがわかった。この化合物はBPRを凍結する強固な三座配位子を有していることから, 異性化反応はTR機構で進行しているものと考えられ, 理論計算でもTR機構で進行していることを確認した。
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