Research Abstract |
我々は,超原子価5配位炭素化合物及びホウ素化合物の安定化のために新しく開発した7-6-7員環骨格を有するpincer型三座配位子を用いてきた。本研究では,(1)ドナー原子としてリン原子を有する新規pincer型配位子の合成,及び(2)合成した配位子を有する遷移金属錯体(Ir, Ni, Pd)の合成を行った。さらに,(3)イリジウム錯体に関して,アルカンの脱水素化触媒としての利用を検討した。まず,リンを供与性配位原子とする合成経路に取り組み, m-xyleneを出発物質として,配位子前駆体であるジブロモ体を合成し,リチオ化した後に,種々のリン試薬を加えることにより,リン原子上の置換基の異なる配位子の合成に成功した。合成した配位子を用いて遷移金属錯体(Ir, Ni, Pd)の合成にも成功した。配位子と0.5当量の[Ir(cod)Cl]_2をp-xylene還流下で反応させることにより,目的のイリジウムヒドロクロリド錯体の合成に成功し,X線解析により構造決定した。合成したイリジウム錯体の変換反応を検討した。NaOt-Buをベンゼン中室温・水素雰囲気下で反応させることにより,テトラヒドリド錯体を合成し,さらにCO気流下においてカルボニル錯体を合成した。 これらの合成したイリジウム錯体を触媒とするアルカンの脱水素化反応の検討を行った。触媒活性の検討の結果,イソプロピル基を持つ錯体がcyclooctane及びかn-octaneの脱水素化反応において,均一系触媒として最も高いTON(turnover number)を示すことがわかった。また,他いくつかの基質においても活性を示すことが分かった。一方で,同様のTONを示すことが期待されたシクロヘキシル基を持つ錯体は触媒活性を示さなかった。これら触媒活性の違いの原因は明らかとなっておらず,現在その詳細について研究を行っている。
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