2008 Fiscal Year Annual Research Report
カルコゲン架橋二核骨格をもつ酵素活性中心モデル錯体の合成と触媒機能
Project/Area Number |
18065013
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 剛 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 助教 (50311717)
|
Keywords | 複核金属錯体 / チオラート / アセチルCoA合成酵素 / ニッケル錯体 / アセチルチオエステル / 協同作用 / 炭酸固定 / 酵素モデル |
Research Abstract |
天然に存在する金属酵素には、複数の金属を協同作用によって興味深い有機金属的触媒反応を担うものが数多く知られている。我々は、基質の還元反応に関与する還元系金属酵素に注目し、それらのモデル構築と反応機構解明を行うとともに、触媒的応用をめざして研究を進めている。H20年度は、アセチル-CoA合成酵素(ACS)モデル錯体を用いたモデル反応の検討を詳細に検討し、酵素機能の解明につながる成果を得ることができた。N_2S_2型のキレート配位子としてdadt^<Et>(dadt^<Et>=N, N'-diethyl-3, 7-diaza-nonane-1, 9-dithiolate)を有するNi(II)-Ni(O)二核錯体が、メチルコバラミンのモデル化合物であるメチルコバロキシムからメチル基を引き抜き、チオラート、COと順次反応してアセチルチオエステルを与えるとともに、活性種であるNi(II)-Ni(O)二核錯体を再生することを見いだした。またNi(II)-Ni(I)モデル錯体の合成にも成功し、この錯体がNi(II)-Ni(O)二核錯体と同様にメチルコバラミンと反応することがわかった。これら一連のモデル研究から、ACSについて以下の知見が得られた : (1)Ni_dサイトは直接反応には関与せず、Ni_p上で反応が進行すると考えられる。(2)反応開始時はNi_p(O)またはNi(I)_pがメチルコバラミンのメチル基を引き抜き、Ni_p(II)-Me種が生成する。(3)COがニッケル-炭素結合に挿入し、ニッケル上に配位したCoAとの還元的脱離によってアセチルCoAが生成する。(4)アセチルCoA生成にともなって活性種Ni_p(O)が再生される。
|