2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18066001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武次 徹也 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (90280932)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野呂 武司 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50125340)
中山 哲 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (10422007)
|
Keywords | 第一原理分子動力学法 / 光化学反応 / アゾベンゼン / 無輻射過程 / 異性化反応経路 / RATTLE法 / 非断熱遷移 / 励起寿命 |
Research Abstract |
本課題では、実験研究でターゲットとされる多原子分子の電子励起状態の関与するプロセスに対し、反応機構およびダイナミクスを第一原理に基づき調べることのできる理論手法ならびに汎用的なプログラムを開発することにより、量子化学研究の適用範囲を励起ダイナミクスの領域へと拡張することを目指している。今年度は、アゾベンゼンのS_0→S_1(nπ*)励起後の反応ダイナミクスに対し、CASSCFレベルで状態遷移をあらわに考慮したAIMDシミュレーションを行い、異性化の収率、励起寿命、反応経路、状態遷移機構について詳細な議論を行った。さらにAIMD計算の効率化(コスト軽減)を試みた。AIMDシミュレーションにおいてコストを軽減するには、1点あたりの電子状態計算を軽くすることと、trajectory計算のタイムステップを可能な限大きくするという2つの因子が考えられる。後者を目的に反応にそれほど関与しないと考えられるフェニル基のCH結合長を平衡構造の値に固定し、conventionalなMD計算でよく用いられるRATTLE/SHAKE法をAIMDプログラムに実装して、励起ダイナミクス計算を行りた。初期条件は、cis体およびtrans体の基底状態における平衡構造近傍において300Kの条件下で各基準振動の座標と運動量を生成し、cis体から200本のtrajectoryを240fs、trans体からは100本を3ps走らせた。その結果、nπ*励起においてもアゾベンゼンの光異性化は基本的に中心部分のCNNC二面体角が回転することにより進行することが確認された。ただし、この回転の様式には時計周りと反時計回りの2種類があり、初期条件によりいずれかの経路をとることが新たにわかった。cis体、trans体からの反応の異性化の収率はそれぞれ0.45,0.28となり実験値と非常に良い一致を示した。
|