2007 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー場における複合電子系分子のダイナミックスとその制御
Project/Area Number |
18066002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河野 裕彦 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 教授 (70178226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 幸義 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40203848)
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Keywords | 原子・分子 / レーザー / フラーレン / 動力学理論 / 衝撃ラマン励起 / 中性子散乱 / 分子振動制御 |
Research Abstract |
波長約1800nmの高強度近赤外レーザーパルスを用いれば、C_<60>の12価までの超多価カチオンがほとんど解離を伴うことなく生成する。本年度、我々はこのようなC_<60>の安定性を利用すると、パルス列を使って振動励起を制御できることを、レーザー場によって歪んだ断熱ポテンシャルを取り込んだ第一原理分子動力学計算(時間依存断熱状態法)によって明らかにした。2つのパルス(波長1800nm、光強度7×10^<14>W/cm^2、パルス長30fs)をその時間差τを変えて照射した。τ=134fsと201fsの2つの場合に励起された振動の振動数成分を分析し、前者の場合には、h_g(1)モードの振動数に相当する振動が強く励起されており、全体では60eVものエネルギーを獲得していることが確認された。後者の場合には、主にa_g(1)モードの振動数に相当する振動が励起され、モードスイッチングできる。10fsより短いパルスと相互作用する場合は、C_<60>では複数の電子が非段階的に放出される特異なイオン化が起こる。この現象が多くの電子が非断熱的に励起され、パルス照射後20fs以内にさらに電子が放出される遅延イオン化によることを時間依存密度汎関数法を用いて明らかにした。 また、Dreismannら4)の熱外中性子領域の中性子散乱実験を解析するため、水の分子内振動を考慮したクラスターモデルを適用した。軽水と重水の混合水中のHとDによって散乱された中性子の飛行時間スペクトル上のピーク位置と幅は実験で得られたものとほぼ一致し、熱外中性子散乱に分子内振動波動関数の情報が反映されていることを明らかにした。
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