2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18066006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (20094013)
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Keywords | 分子理論 / 電子状態理論 / 遷移金属錯体 / 反応理論 / 分子構造 / カリックスフィリン / 酸素活性化 |
Research Abstract |
遷移金属元素を含む複合電子系、とりわけ、複雑な電子状態を含む系を取り上げ、結合性、電子状態、反応の電子的過程の理論的研究を行い、以下に述べる結果を得た。Cr(II)の二核遷移金属錯体は静的電子相関が大きく、その定量的な理論計算は困難である。最近報告されたオープンランタン型Cr(II)二核錯体の構造と結合性をMRMP2法を用いて検討した。遷移金属錯体に広く用いられているDFT法では結合距離が著しく過小評価されるが、CASSCF法では過大評価され、静的相関に動的相関を取り込んだMRMP2法で実験結果におよそ一致する結合距離が得られた。一方、類似のMo(II)二核錯体ではDFT法、CASSCF法、MRMP2法いずれも同程度の結合距離が得られ、第二遷移周期元素では静的相関が小さいことが示された。これらの結果から結合距離と静的相関の大小を判断する新しい指標、Orbital Shortness Ratioを提案した。Fe(III)を含むカテコールジオキシゲナーゼによる酸素活性化過程の詳細は明らかで無い。通常、Fe(II)錯体による酸素活性化は分子論的理解が進んでいるが、Fe(III)錯体による活性化の理解はほとんどない。本研究ではこの過程をCASPT2法で検討し、系全体は六重項であること、DFT法ではこのエネルギー変化を記述できないこと、CASPT2法で始めて記述可能なこと、さらに、Fe(III)中心はFe(II)になることはなく、酸素分子のπ*軌道エネルギーを安定化させて、カテコール配位子かち酸素分子への電荷移動が起きることを明らかにした。これまで、酸素活性化におけるFe(III)中心の役割を始めて明らかにした。また、新しいP,S含有カリックスフィリンPd錯体の興味深い電子状態と反応性を理論的に明らかにした。
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