2006 Fiscal Year Annual Research Report
複合電子系の柔軟性による非線形光学物性の発現機構と分子設計
Project/Area Number |
18066010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 雅由 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (80252568)
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Keywords | 非線形光学 / 超分極率 / 開殻分子 / ジラジカル / Ab initio法 / 密度汎関数法 / マスター方程式 / エキシトン |
Research Abstract |
一重項ジラジカル系のモデル分子として、H2分子の解離モデル、エチレンの回転モデルについて、第二超分極率γのジラジカル因子依存性について検討した。UHF計算の自然軌道の占有数から計算したジラジカル因子(0【less than or equal】y【less than or equal】1)を用い、γが中間のyの値(中間相関領域)で極大を示すことを示した。この増大の原因は、摂動論と状態モデルに基づいて解明され、基底状態と第一励起状態間の遷移モーメントがyの増大とともに0に向かって減少し、一方、第一、第二励起状態間の遷移モーメントが増大していく一方、励起エネルギーがyの増大とともに減少することに起因していることが判明した。様々なジラジカル因子をもつモデル分子系(p/o-キノジメタン、イミダゾール環を含む系、フェナレニルラジカル系)においてジラジカル因子とγの関係を明らかにした。さらに開殻単分子系のみならずそれらのユニット分子からなる分子集合体や超分子系のNLO特性の構造-特性相関を明らかにするため、最も簡単なモデルとして、H原子からなる一重項ジラジカル系(H2),直鎖構造をもつ一重項テトララジカル系(H4)に関して原子間距離を変化させた際のγの(平均)ジラジカル因子依存性について検討を行った。これらの系は、π共役をもつ直鎖型一重項開殻系あるいは開殻分子からなる分子集合体のモデルと見なすことができる。結合交替のない場合は、小さなサイズの系は中間領域のジラジカル性の場合にγの極大値を示すが、鎖長の大きな系の場合には、中間領域より小さな平均ジラジカル性領域でγの増大を顕著に示すことが予測された。さらに、鎖長の大きなH鎖や荷電欠損を導入した場合に関しては現在検討中である。 動的な非線形光学スペクトルの計算には、マスター方程式を数値的に解き、その時間依存分極から各次の非線形光学定数を求めることを行う。複数状態モデルおよびモノマーからなる分子集合体でのマスター方程式法によるエキシトンダイナミクスの結果から非線形光学スペクトルを算出する計算方法やプログラムの整備を行っている。
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Research Products
(12 results)