2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18066018
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (70262847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 州正 高知工科大学, 総合研究所, 准教授 (40449913)
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Keywords | 2次元赤外分光法 / 分子動力学法 / 水 / 分子間運動 / 不均一性の減衰 / 緩和現象 / 非平衡分子動力学法 |
Research Abstract |
2次元赤外分光法(2DIR)は系の電場に対する3次の応答を測定する分光法である。2DIR法は時間t_1とt_3の間の運動の相関の待ち時間t_2依存性を解析することが可能な強力な分光法であり、我々は、系に電場を入射する非平衡分子動力学計算で得られる軌道を用いて2DIRスペクトの計算を行い、そのスペクトルに水の分子間運動の如何なる性質が反映されている解析を行った。 水の分子間運動に関する2DIRスペクトルの理論計算を行い、水の衡振運動の不均一性が、約115fsという非常に短い緩和時間で失われることを明らかにした。また、我々は、水の分子間並進運動は衡振運動よりも非調和が大きく、並進運動と衡振運動のカップリングについて明らかにしてきた。そこで、衡振運動における速い不均一性における水分子間の並進運動影響を解析したところ、衡振運動に比べ2-3倍も遅い水分子間の並進運動により衡振運動の速い不均一性の減衰が引き起こされていることを明らかにした。また、水の2DIRスペクトルの非対角成分(v_1,v_3)〜(600cm^<-1>,100cm^<-1>)の解析から、約180fsの非常に速い時間スケールで衡振運動から分子間並進運動への遷移が起こっていることも明らかにした。 今回の解析により、水の衡振運動に初期の不均一性が見られ、その不均一性の減衰、すなわち「遅い周波数変調」から「速い周波数変調」への変化が約115fsの非常に速い時間スケールで減少することを明らかにした。さらに、その速い緩和時間、大きなスペクトル拡散、エネルギー緩和機構における分子間並進運動の重要性を明らかにした。水中のさまざまな緩和現象が非常に高速であることが80年代から知られており、その高速ダイナミクスの起源は500-1000cm^<-1>の高い振動数をもつ衡振運動によると考えられてきた。今回の解析により、水の溶媒としての重要な性質の1つである高速で高効率の緩和過程は、速い衡振運動の存在だけでは不十分で、衡振運動に比べ遅い非調和性の強い並進運動により引き起こされていることを明らかにした。
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Research Products
(7 results)