2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18066018
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (70262847)
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Keywords | 水 / 空間・時間的不均一ダイナミクス / 2次元赤外分光法 / 複素比熱 / 構造変化ダイナミクス / 不均一性の減衰 / 非平衡分子動力学法 / 非線形赤外分光法 |
Research Abstract |
我々は凝縮系の運動を理解することを目的に、空間・時間的不均一ダイナミクスにおける揺らぎと緩和機構の解明、凝縮系の揺らぎを解析する有効な手法の一つとして非線形赤外分光法の解析も進めている。本年度は、特に(1)過冷却水における定圧比熱の特異的温度依存性の分子論的機構の解明、(2)非線形赤外分光法による水の分子間ダイナミクスの解析を行った。 (1) 過冷却水における定圧比熱の特異的温度依存性の分子論的機構の解明。 水を過冷却状態にすると低温において、等積比熱には見られない急激な上昇が等圧比熱に見られる。分子動力学計算においても、この特異的温度依存性が見られることを確認し、温度変化に伴う体積増加により四面体構造をとる分子が急激に増加し、さらに、四面体構造の構造変化ダイナミクスが急激に遅延化することにより比熱の急激な増加になることを明らかにした。 (2) 非線形赤外分光法による水の分子間ダイナミクスの解析。 水の赤外ポンププローブ分光法の理論計算を行った。その結果、衡振運動の寿命が約65fs、さらに低い振動数の運動へとエネルギー散逸が起こり、水素結合ネットワークの変化によるいわゆるhot ground stateに約500fsで緩和していることが分かった。さらに、異方性減衰は約115fsと、衡振運動の物理的回転の時間スケールよりも圧倒的に速いことを明らかにした。これらの結果から、衡振運動の励起によるエネルギーおよび分極が水素結合ネットワークを通して周囲の分子に非常に速く散逸している様相を明らかにした。
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Research Products
(11 results)