2009 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー散逸を伴う電子ダイナミックスの理論と材料物性
Project/Area Number |
18066019
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
信定 克幸 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (50290896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安池 智一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10419856)
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Keywords | 電子ダイナミックス / 量子散逸 / 電子数揺らぎ / 電子的コヒーレンス |
Research Abstract |
1. 表面吸着系の電子物性や電子・核ダイナミックスを分子レベルで理解するためには、吸着系と表面の間で起こる電子エネルギーの散逸を正しく記述することが必須である。我々は、吸着原子と金属表面との間で起こる電子エネルギーの散逸を考慮に入れた新しいクラスターモデル理論を開発し、金属表面吸着種の光誘起振動励起過程の核波束ダイナミックスの計算を進めてきた。前年度までの研究に引き続き、少数の透熱ポテンシャルを抜き出し、そのポテンシャル曲線上で核波束ダイナミックスの計算を行い、貴金属表面吸着種の光誘起振動励起メカニズムの解明を行った。 2. 時間依存密度汎関数理論に基づいて、分子の光吸収振動子強度分布を正確に計算するための大規模並列化実時間・実空間電子ダイナミックス法の開発を行った。振動子強度分布を正確に記述するためには、光イオン化過程を正確に取り扱う必要がある。我々は並列化によって、十分広い空間の計算を可能にし、更に吸収ポテンシャルを置くことにより、光イオン化過程を高い精度で記述できることを見出した。この手法を用い、C_<60>分子に対しては初めて第一原理計算により空間領域に関して収束した振動子強度分布を得ることに成功し、実験値を高い精度で再現することを見出した。 3. チオラート保護金クラスターにおいては、Au_<25>(SR)_<18>が安定組成であり、その幾何構造についてはAu_<13>コアの周りを6つのオリゴマーが覆った構造であることが明らかにされている。一方、Au_<25>(SR)_<18>の中心原子を他金属で置換すると、クラスターの安定性がさらに向上することが理論的に予測されている。本特定領域公募班実験グループと共同で、Au原子をPd原子で置換したパラジウム金チオラートクラスターPdAu_<24>(SR)_<18>を対象として電子物性の研究を行った。実験と理論両方の観点から解析した結果、合成したクラスターはAu_<25>(SC_<12>H_<25>)_<18>の中心原子がPd原子に置きかわったコアシェル型のPd_1@Au_<24>(SC_<12>H_<25>)_<18>構造を有していることが分かった。
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