Research Abstract |
今年度は本特定領域初年度であり,まず,研究代表者・分担者が定期的に議論の場を設け,今後4年間で取り組むべき具体的課題をピックアップし,また,その際の問題点を洗い出した.それら課題の中で,今年度は量子揺らぎを用いた情報処理の中でも,量子揺らぎを用いた組み合わせ最適解探索法である量子アニーリングにおいて,断熱発展の際に問題となる,基底状態と第1励起状態との間のエネルギーギャップを,1次元XY模型,2次元XXZ模型,平均場模型に対して計算し,その結果について議論した.その成果の一部は「量子揺らぎを用いた情報処理における確率モデルとその基底状態および低励起状態についての考察」,井上純一,雑賀洋平 科研費特定領域研究「情報統計力学の深化と展開」平成18年度研究成果発表会,2006年12月18日-20日,大手町サンケイプラザにて発表された.また,本特定領域の発足前年度から継続して行われていた,量子揺らぎを用いたソーラス符号の構成法とその性能評価に関しても成果が出揃い始めたので,今年度得られたエネルギーギャップの成果とあわせて投稿論文としてまとめる予定である.また,本研究課題では量子揺らぎを用いた情報処理についての知見を深める(Deepening)とともに,新たな情報処理の諸問題を開拓していく(Expanding)こともその目的とする.新しい問題の開拓として,印刷技術において用いられるデジタル・ハーフトーン処理,及び,逆デジタル・ハーフトーン処理を情報統計力学の方法を用いて定式化した.さらに,近年,統計力学を用いた目覚しい解析結果が出始めているCDMAマルチユーザ復調器に関し,そのMAP解の個数をスピングラスに対して開発されたTanaka-Edwardsの方法で計数することを試みた.これらの結果はいずれも国際学会等で発表され,次年度以降改良・修正を経て,学術論論文誌に投稿予定である.
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