2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18079004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 孝治 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80282606)
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Keywords | 統計力学 / 物性基礎論 / モンテカルロ法 / スピングラス / 情報基礎論 / 相転移 |
Research Abstract |
本研究は,大規模確率分布を扱う近似的確率アルゴリズムの応用と開発が目的である.今年度はランダムグラフ上に定義される制約充足問題に確率アルゴリズムの一つであるモンテカルロ法を応用し,その性質を調べた.近年,確率伝搬法を基礎とした理論的研究から,あるクラスの制約充足問題では相空間の構造に相転移が起こり,それにともなって局所探索型アルゴリズムの適用限界があることが示唆されている.我々は局所探索型ではあるものの大域的な探索が可能であると予想される交換モンテカルロ法を適用し,アニーリング法との比較を行った.その結果,アニーリング法では到達できない領域で,かつ交換法では到達可能な領域が有限系で確かに存在することが確認できた.これは,交換法の有効性を示すとともに,制約充足問題,さらには物理の問題としてはガラスの平衡状態の研究への展望が開けたことになる.実際に,有限次元格子上での同様なガラスの模型において熱平衡ガラス相転移を示唆する結果を得た.今後のガラス研究への展開も期待される.さらに今年度は新たなアルゴリズムとして,非線形多変数方程式の解の個数計算法を提案した.これは基本的にはこれまでに続けてきたモンテカルロ法によるエントロピー計算の新たな応用であるが,方程式の解からのずれをエネルギー関数としたところが新規な点である.この方法によって,例えば平均場方程式や信念伝搬法の解の個数の情報を得ることができる.今年度は理論研究があるスピングラスの平均場方程式の個数を数値的に評価し,精度を確認することに成功した.
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