2008 Fiscal Year Annual Research Report
情報エントロピーの概念に基づいた情報統計力学の再構築と情報通信理論への展開
Project/Area Number |
18079010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 利幸 Kyoto University, 情報学研究科, 教授 (10254153)
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Keywords | 情報統計力学 / 情報理論 / 情報通信 / レプリカ法 / CDMA / MIMO / 通信路推定 / ランダム行列 |
Research Abstract |
本年度はおもに, ランダム行列の漸近固有値分布に関する昨年度までの検討結果に立脚して, ランダム拡散CDMA通信路において大システム極限で漸近的に最適な拡散符号系列の情報統計力学的アプローチによる特徴づけに関する検討を行った. 入力がガウス分布に従う場合には結果が既知であるが, 実用上重要な非ガウス入力の場合は研究がほとんどなされていないので, 後者の場合について検討を進めた. 前年度に得られた, 完全電力制御の場合にWBE(ウェルチ限界を達成する)拡散符号系列が漸近的に最適であるという結果を拡張することにより不完全電力制御の条件を含む一般の場合について議論し, ガウス入力の場合に最適であることが知られているいわゆるGWBE(一般化WBE)拡散符号系列が, 一般に非ガウス入力の場合には漸近的最適性を喪失することを明らかにした. また, 一般の線形ベクトル通信路において受信側で通信路行列が未知であるような場合には, パイロット信号を使用するなどして通信路推定を行う必要がある. 通信路推定の誤差を考慮した情報伝送能力の解析的評価を情報統計力学的アプローチにもとづいて実施した. 得られた結果にもとづいて, 受信器における性能と計算複雑度とのトレードオフやパイロット信号とデータとの最適な比率などの問題に関して, 定量的な議論が可能であることを示した. 一般の線形ベクトル通信路に対する並列干渉除去アルゴリズムの情報理論的解析については, 低密度パリティ検査(LDPC)符号の復号アルゴリズムのダイナミクスの研究に有用である外部情報伝送(EXIT)解析を, また, 無限次元極限における疎なランダム行列の漸近固有値分布に関しては, 非零要素の分布への特異な依存性に注目した解析を, それぞれ前年度に引き続き進めているが, 本年度は新たな成果が得られる段階まで研究が進展するに至っておらず, 来年度も解析を継続する予定である.
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Research Products
(16 results)