2008 Fiscal Year Annual Research Report
分散符号化による適応的計測・通信システムの提唱と構築
Project/Area Number |
18079015
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
村山 立人 NTT Communication Science Laboratories, メディア情報研究部, 研究主任 (80360650)
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Keywords | 情報統計力学 / センサーネットワーク / 計測工学 / 情報システム / 数理工学 / 統計力学 / ネットワーク / 制御工学 |
Research Abstract |
本年度は,センサー集団のシステム化における情報利得(システム化利得)発現のメカニズムを大偏差理論のアプローチで再分析し,情報統計力学による諸結果を現代的な確率論の枠組で捉え直すことに成功した.情報統計力学によるアプローチでは,対称性の高い符号化(あるいは復号)モデルによって定義される繰り返しアルゴリズムの精密な性能評価を可能としたが,対称性の低い符号化(あるいは復号)にモデルによって定義されるアルゴリズムの分析にはむしろ不向きである.このため,情報理論的に実現可能なすべての符号化特性を前提条件とした汎用的議論には別の分析枠組を用いる必要があり,それに最適なのが大偏差理論である。大偏差理論とはシステムの平衡状態(平均値)からの「ゆらぎ」を定量的に分析するために発展した応用確率論の一分野であり,情報統計力学の数学的基礎を与えるより汎用的な枠組である.本年度は情報統計力学と大偏差理論のこの理論的親和性に注目し,前年度までに提唱した情報統合理論の精密化・一般化を実現した.これによって,より解像度の高いセンサー集団のシステム化の分析が可能となり,情報利得を最大化する計測データのデータ圧縮率(の逆数)があるノイズ閾値を境界として連続転移する事実が数学的に証明できた.この発見により,システム化利得発現のメカニズムをより立体的に考察することが理論上可能となり,現実的なシステムに対してもその設計指針を与えることができたと考えられる.さらに,最適データ圧縮率(の逆数)の連続転移は磁性体の相転移現象と極めて類似した構造を持っているので,物理学の立場からも興味深い話題を提供できた.
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Research Products
(5 results)