2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18080003
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
内藤 方夫 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 教授 (40155643)
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Keywords | MgB_2 / ジョセフソン接合 / ホットエレクトロンボロメータ / 電波天文学 / エピタキシャル薄膜 / 超伝導単一光子検出器 |
Research Abstract |
本研究課題は、2001年に発見されたMgB_2(T_c〜40K)を用いた超伝導接合の作製技術を確立し、「ポストニオブ」超伝導エレクトロニクスの基盤を築くことを目的とする。MgB_2は、T_cこそ銅酸化物に比べて低いが、二元化合物、シンプルな結晶構造、通常金属、弱異方性、長コヒーレンス長といった利点を有するために、超伝導応用に有望な材料として期待されている。実用に十分な臨界電流、特に薄膜ではJ_c〜100MA/cm^2に迫る値が報告されており、かつ、微細加工が容易なことから、線材応用と並んで、超伝導エレクトロニクス応用に向けた研究開発が始まりつつある。超伝導デバイス作製に向けては、高品質な薄膜及びジョセフソン接合の作製技術が鍵となる。銅酸化物高温超伝導体のジョセフソン接合技術の開発が困難を極める中で、MgB_2超伝導エレクトロニクス基盤技術を確立することは、今後のこの分野の発展にとっても極めて重要である。 さらに、我々の最近の研究から、MgB_2は接合応用以外にも有望であることが明らかになりつつある。一般に、超伝導薄膜細線を温度計として用いることにより、X線や電磁波検出が可能となる。電波と光の中間に位置するテラヘルツ領域は高感度な検出が困難な波長帯である。この波長帯の最も高感度な検出器は超伝導体を用いたホットエレクトロンボロメータ(HEB)で、電波天文学では欠かせない素子となっている。HEBは、超伝導体にテラヘルツ波が照射されると、超伝導ギャップを超えて準粒子が励起され、電子温度が上昇するとともに、超伝導電流が抑制されることを原理としている。ボロメータの応答速度が速いほど、より広帯域のテラヘルツ検出器となる。高速応答には、電子系の温度上昇を格子系、さらには、環境系(基板)へ速やかに逃がす必要がある。通常律速となるのは後者であるが、MgB_2は音速が大きく、Si、MgO、Al_2O_3等広く使用されている基板との音響インピーダンス整合が良いため、MgB_2-HEBではτ_<esc>【approximately equal】20psという現状用いられているNbNに比べて約1桁速い応答が実証されている。さらに、HEBと同様な原理を基礎とする超伝導単一光子検出素子(SSPD)への展開も興味深い。
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