2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18080003
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
内藤 方夫 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (40155643)
|
Keywords | 二硼化マグネシウム / ジョセフソン接合 / ホットエレクトロンボロメータ / 電波天文学 / エピタキシャル薄膜 / 超伝導単一光子検出器 |
Research Abstract |
本研究課題は、2001年に発見されたMgB_2(T_c~40K)を用いた超伝導接合の作製技術を確立、「ポストニオブ」超伝導エレクトロニクスの基盤を築くことを目的とする。2008年度以来、本特定領域研究において製作した分子線エピタキシー成長装置を用いて、サンドイッチ型接合作製に向けたMgB_2/バリヤ/MgB_2の三層積層に取り組んでいる。最初に試みたのは、MgB_2と格子整合の良い常伝導AlB_2・TiB_2をバリヤとするオールエピタキシャルSNS接合である。しかし、MgB_2は真空中では300℃以上で分解するため、300℃以下の低温プロセスが要求される。バリヤ層のAlB_2・TiB_2がこのような低温では良好なエピタキシャル成長をしないことが判明したため断念した。2009年度は、アモルファスバリヤ(アモルファスボロン(a-B)、アモルファスシリコン(a-Si))とするSIS接合の作製を集中的に行った。同じ特定領域に属する名大・藤巻研究室との共同研究により評価したMgB_2/a-B/MgB_2接合では、磁場及びマイクロ波に応答するジョセフソン電流が観測された。一方で、ジョセフソン電流は小さく、また、接合のT_cは10K程度で、単体のMgB_2薄膜のT_c~35Kに比べてはるかに低い。高品質MgB_2接合作製においては、バリヤ層に接した界面近傍のMgB_2の超伝導特性が鍵を握る。下部電極とバリヤの界面に劣化層がないこと、及び、バリヤ上の上部電極の初期成長が良好であること、の2点が重要である。我々の過去の研究から、MgB_2においては後者の問題がより重大であると判断しており、そのため、様々なバリヤ上のMgB_2初期成長に焦点を当てた。サファイア基板上にMgB_2を直接成膜した場合には、10nmのMgB_2超薄膜でもT^<onset>_c~20Kが観測される。一方、サファイア基板上にバリヤ材料であるa-Bやa-Siを堆積した後にMgB_2を成膜した場合には、MgB_2超薄膜の超伝導特性が著しく劣化し、T^<onset>_cは10K以下となる。これが接合のT_cを下げている原因と推測された。250℃程度の低温プロセスにおいても、MgB_2とバリヤ材料の反応が無視できないことを示している。今後、さらなるプロセスの低温化、及び、バリヤ材料の探索により、30K以上で動作するオールMgB_2接合の作製を目指す。
|