2008 Fiscal Year Annual Research Report
情動の分子基盤とその高次脳機能と精神神経疾患における役割の解明
Project/Area Number |
18100003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真鍋 俊也 The University of Tokyo, 医科学研究所, 教授 (70251212)
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Keywords | 扁桃体 / グルタミン酸受容体 / 長期増強 / 海馬 / マウス / シナプス伝達 / 情動 / 電気生理学 |
Research Abstract |
1.視床から扁桃体外側核に入力する興奮性シナプス応答の基本特性を解明するために、これまでに詳しく検討されている海馬CAl領域での興奮性シナプス応答と比較しながら、扁桃体外側核でのNMDA受容体シナプス応答とシナプス可塑性を電気生理学的に検討した。扁桃体と海馬のいずれにおいても、NMDAシナプス応答にNR2Bサブユニット依存性成分が存在し、その割合は扁桃体のほうが多いことがわかった。 2.情動の発現に関与することが知られているアセチルコリンのシナプス伝達修飾機構を解析した。アセチルコリンは、シナプス前終末に存在するムスカリン性受容体を活性化することにより、神経伝達物質の放出を抑制していることが明らかとなった。M_2受容体およびM_4受容体がそれに関与していることもわかった。 3.本プロジェクトでは、NR2Bサブユニットのチロシンリン酸化の恐怖記憶における役割に焦点を当てて実験を進めた。NR2Bで最も強くリン酸化されるTyr-1472をフェニルアラニンに置換したノックインマウスの機能解析を行ったところ、扁桃体外側核での長期増強が、野生型マウスに比べて、変異型マウスで大きく減弱していた。それに合致して、変異型マウスでは音恐怖条件付けに大きな障害が観察された。これらの障害の原因としては、NR2Bサブユニットのシナプス部位での局在の異常とCaMKIIなどの機能分子の結合の異常が関与していることがわかり、これまでまったく知られていなかったNMDA受容体の新たな機能を明らかにすることができた。
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