Research Abstract |
我々は,ウレタン麻酔下および自由行動時のラット嗅球を解析し,嗅球内の顆粒細胞から僧帽細胞への樹-状突起問抑制性シナプス伝達の大きさが睡眠,覚醒状態に依存して大きく変化することを平成18年度に見いだした。平成19年度には,この睡眠,覚醒状態に依存した樹状突起間シナプスの機能調整が,アセチルコリン作動性の遠心性神経線維によって媒介されることを発見した。すなわち,覚醒時にはアセチルコリン作動性の神経線維は高い活性を示し,ムスカリン性アセチルコリン受容体を介して,顆粒細胞から僧帽細胞への樹状突起間シナプスの働きをシナプス前性に抑制する。一方,睡眠時には,アセチルコリン作動性神経線維によるシナプス前性抑制は減少し,樹状突起間シナプス抑制は増大することを見いだした。アセチルコリン作動性神経線維は睡眠,覚醒状態に依存して活動が変化し,脳のほぼ全領域に投射しているが,本研究により,嗅球では特定のシナプスの機能を調節することにより,嗅球神経回路での情報処理モードを変化させていることがわかった。
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