2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境変異源によるDNA二重鎖切断の発生と発がん過程
Project/Area Number |
18101002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小松 賢志 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80124577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 孝司 大阪府立大学, 産学官連携機構, 教授 (80182301)
田内 広 茨城大学, 理学部・地球生命環境科学科, 教授 (70216597)
松浦 伸也 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (90274133)
加藤 晃弘 京都大学, 放射線生物研究センター, 研究員 (70423051)
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Keywords | NBS1 / H2AXリン酸化 / DNA二重鎖切断 / 損傷乗り越え合成 / H2Bユビキチン化 / クロマチンリモデリング |
Research Abstract |
DNA二重鎖切断はかつて電離放射線照射により誘発される特殊なDNA損傷と思われていた。しかし、従来の生化学的方法よりも数百倍-数千倍の高感度なヒストンH2AXリン酸化を用いたDNA二重鎖切断の検出が可能になった結果、環境変異原もDNA二重鎖切断を誘発する可能性が指摘されている。前年度に我々が調べた紫外線、多環芳香族化合物、ゲニステン,エトポシド,アスベスト、ソラーレンなどほとんど全ての環境変異原によるH2AXリン酸化が観測され、DNA二重鎖切断あるいはそれに類似した現象が確認された。一方、これらの処理によるH2AXリン酸化部位には同時にDNA修復蛋白NBS1が共局在したので、我々は紫外線照射時のNBS1ドメイン解析を行った。DNA二重鎖切断へのリクルートにはNBS1蛋白のN末側が必須であることが知られている。しかし、N末欠損のNBS1でも損傷部位に集積する事からこれらのH2AXリン酸化部位はDNA二重鎖切断部位を反映してない可能性が示された。実際、紫外線照射時のNBS1はDNA二重鎖切断の再結合と言うよりも、RAD18をリクルートする事により損傷トレランスに機能していることが示された。H2AXリン酸化の役割はDNA修復におけるクロマチンリモデリングと思われていたが、本研究ではヒストンH2Bのユビキチン化とそれに続くクロマチンリモデリング因子の集積がDNA修復に必須であることが示された。実際、H2Bのユビキチン化を阻害するとDNA修復が顕著に低下した。また、H2Bのユビキチン化とH2AXリン酸化は独立に進行した。これらの事から、H2AXリン酸化は環境変異原によるDNA二重鎖切断以外の修復にも重要であり、それ単独では必ずしもDNA二重鎖切断のマーカーにならない事が明らかとなった。
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Research Products
(5 results)