2008 Fiscal Year Annual Research Report
バナジウム酸化物に特有の多重基底状態競合がもたらす新奇量子物性の探究
Project/Area Number |
18104008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 寛 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授 (20127054)
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Keywords | 強相関電子系 / 物性実験 / バナジウム酸化物 / 電磁気物性 / 高圧物性 / 圧力誘起超伝導 / 電化秩序 / 金属絶縁体転移 |
Research Abstract |
電荷秩序型金属絶縁体転移と圧力誘起超伝導を示すベータバナジウムブロンズβAgo_<33>V_2O_5について、金属相ではd電子は三つのVサイトにほぼ均一に分布していて、電荷秩序絶縁体相では三つの梯子の各横木を形成する2つのVサイトでd電子1個を共有し、梯子方向にV_<4+>-V_<5+>-V_<5+>-V_<4+>と整列する電荷秩序パタンが有力である。この電荷秩序パタンはβ-Na_<0.33>V_2O_5のCDW的秩序と異なり、同じベータバナジウムブロンズでも電荷整列に個性があることを示している。 ホランダイト型バナジウム酸化物K_2V_8O_<16>について、KサイトをRbで置換すると転移は2段に別れ、高温側の金属絶縁体転移は正方晶から正方品への1次転移で、Rb_2V_8O_<16>の金属絶縁体転移に終端する。一方、低温側の転移は正方晶から単斜晶への2次転移で、2割以上のRb置換で消失する。2段への分裂はVサイトをTiやCrで置換した場合も生じ、この場合は3-4%置換程度で2段とも消失する。このような急激な金属絶縁体転移の消失は転移の起源が電荷秩序にあろことを物語っている。すなわち、V_<3+>/V_<4+>=1/3の混合原子価化合物であるA_2V_8O_<16>(A=K, Rb)において、Vサイトに置換したTi(Cr)は絶線体相では安定なTi^<4+>(Cr^<3+>)状態をとろうとするたや、ランダムに分布したTi(Cr)は電荷秩序を阻害する。K_2V_8O_<16>の金属絶縁体転移は加圧によっても抑えられるが、IGPa以上では転移温度は上昇し、この絶縁体相は低温で反強磁性に転移する。このように、ホランダイト型バナジウム酸化物においても色々な基底状態が競合していることが判明した。 他に、磁性イオンで形成された1次元鎖が非磁性のVO_4により架橋された酸化バナジウム低次元磁性体Mn_2V_2O_7β-Cu_2V_2O_7, FeVO_4やCr酸化物では珍しい金属反強磁性を示す物質CaCrO_3の開発に成功した。副産物として、その構造にVO_4を含むRbVO_4やCsVO_4において白色発光現象を観測し、薄膜化にも成功した。現在、特許申請中である。
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Research Products
(12 results)