2006 Fiscal Year Annual Research Report
ボルン-オッペンハイマー描像を超えた動的分子理論と新しい化学の展開
Project/Area Number |
18105001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高塚 和夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70154797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛山 浩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助手 (40302814)
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Keywords | 原子核同時動力学 / 分子動力学 / 化学反応 / 電子エネルギー移動 / 励起分子素過程 |
Research Abstract |
本研究では、化学動力学理論において積み重ねてきた高い実績に立って、Born-Oppenheimer描像を超える分子の動力学理論を創成し発展させることを目的としている。本年度は、以下のような成果をえた。 1)Born-Oppenheimer (BO)近似の適用限界の解析を行い、従来漠然と考えられていたより、適用限界が広いということを明らかにした。特に、誤差項は、電子と原子核の質量比の1.5乗に比例することを明らかにした。BO近似の重要性に鑑み、この成果は、量子化学の重要な基礎理論となった。 2)原子核と強く相互作用する電子波束の理論(半古典Ehrenfest理論)を使って、プロトン移動と水素原子移行反応のメカニズムを調べた。その結果、プロントン移動には、その回りに必ず電子の部分的分布が追随し、その等量の電子が別のルートで逆遷移することが分かった。プロトン移動素過程の基本的なメカニズムが発見された初めての例である。また、水素原子移行反応に伴う非断熱遷移で、電子が分子間を50-100アト秒のスケールでジャンプすることが明らかに成った。 3)原子核と強く相互作用する電子波束の理論の新しい基礎理論の構築に成功した。従来の非断熱遷移の理論を超えて、電子波束を追究するための理論である。ここでは、古典的に運動する原子核に対して、行列型のニュートン方程式が定式化される。この理論は強いレーザー場の中におかれた分子についても拡張され、現在、大規模な量子化学プログラムに実装されている。
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Research Products
(9 results)