2010 Fiscal Year Annual Research Report
古代中国人類集団の遺伝的多様性とその変遷ならびに生活史の解明
Project/Area Number |
18107007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 信太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20143357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒崎 久仁彦 東邦大学, 医学部, 教授 (60240701)
太田 博樹 北里大学, 医学部, 准教授 (40401228)
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Keywords | 古代DNA / 古人骨 / 遺伝的多様性 / 人類進化 / 中国 / 国際研究者交流 / 次世代シーケンサ |
Research Abstract |
古人骨DNA研究では、古人骨から得られるDNAは超微量かつ断片化されているため、(1)最大でも250塩基長の短いDNA領域をPCR法により増幅し、(2)増幅に成功した試料に関して、その塩基配列を決定する、(3)続いて、他のDNA領域に関してPCR増幅と塩基配列決定をおこない、(4)より多くの塩基配列情報を得る、という極めて非効率な(多大な時間と労力を必要とする)実験に依存してきた。特に問題となるのは、PCR増幅の効率がDNA領域ごとに異なるため、得られた古人骨DNA塩基配列を古人骨間で整列させると虫食い状になる。このため、個体数を必要とする集団解析では共通最大長の配列データを用いることとなるため、ただでさえ短い配列データを短くして次の分析ステップである数理解析を実施せざるを得なかった。この問題を解決することを目的とし、本研究では次世代シーケンサをもちいた古人骨DNA分析に挑戦した。 古人骨は通常土中から取り出されるため、毛髪などの特殊な試料でない限り、現代人と同じ実験操作をおこなったのでは、次世代シーケンサによって得られる塩基配列の99%以上は土中のバクテリア由来の配列であることが予備実験から明らかとなった。そこで、目的とする古人骨由来のDNAのみを選択的に分離するために、合成RNAをベイト配列とした液相でのターゲット・キャプチャーをおこなった。その結果、今回ターゲットとしたミトコンドリアDNAの約80%の領域を平均5以上のカバレッジとなるユニークリードを得、古人骨DNA分析の問題点を劇的に改善することに成功した。さらに、従来の塩基配列決定法であるサンガー法と比較して得られる塩基配列の精度が劣る次世代シーケンサの欠点で補うためにユニークリードを効率よく得るための方策等を種々に施し、現代人のDNA分析と同程度の塩基配列を古人骨からも得ることが出来るという大躍進を収めた。
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