2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18109004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野本 明男 東京大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70112670)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 生体分子 / 脳神経疾患 / 病理学 |
Research Abstract |
ポリオウイルス(PV)感受性トランスジェニック(Tg)マウスを使用しても、PVの経口感染は成立しない。考えられる二点について、改良を加えることで感染が成立するマウス感染モデルの作出に成功した。一点目は、胃の強い酸性領域におけるPVの失活である。pHが1に近い環境では、非常に速い速度でPVは失活することが明らかとなった。これまでエンテロウイルスは酸性に抵抗性であるとの考えがあり、見逃されていた事実である。そこで、PVを経口投与する際に、3%炭酸水素ナトリウム溶液を使用した。その結果、腸管に達するウイルス量は飛躍的に増加することが明らかとなった。二点目は、腸管における自然免疫の強さである。多くの自然免疫系が関与していることが考えられるが、今回はI型インターフェロン(IFN)系の影響をなくすため、I型IFN受容体KOマウスを使用した。以上の二点の改良により、経口投与したPVにより、マウスはウイルス血症を引き起こし、さらにマヒを発症して死に至ることが判明した。世界に先駆け、ポリオのマウス経口感染モデルの作製に成功した。 血中から血液脳関門を透過して中枢神経系に侵入するメカニズムの検討を行った。昨年までに、トランスフェリンによりPVの血液脳関門透過が阻害されることを見出していたので、今年度は、in vitroにおける、PVとトランスフェリン受容体との結合を検討したが、結合するという結果は得られなかった。今後は、in vivoで鉄などによる阻害を検討するつもりである。 神経の細胞体部分と軸索部分の分離培養は、培養器具作製から進めており、作製に関し、企業との共同研究が進行している。 一回のPV感染に抵抗性を示す神経細胞は、PVの2Aプロテアーゼに対し抵抗性であることが判明した。神経細胞もPVの複数回感染に対しては、細胞変性効果を示すので、その原因を追究したところ、P1キャプシド蛋白質が影響していることを示唆する結果を得た。
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Research Products
(2 results)