2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18109005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 昭彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (90182815)
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Keywords | SOCS / サイトカイン / ヘルパーT細胞 / TGFβ / 抑制性T細胞 / チロシンキナーゼ / インターフェロン / 免疫制御 |
Research Abstract |
SOCS-1はIFN-γをはじめとした様々なサイトカインのネガティブフィードバック分子として知られている。SOCS-1は胸腺に強く発現していることからT細胞への機能の関与が考えられるが、Th細胞の分化についての詳細な解析はまだ十分でない。この疑問点を解消するため、われわれはT細胞特異的にSOCS-1を欠損したコンディショナルノックアウトマウス(Lck-Cre SOCS-1マウス)を作製した。既報どおりこのマウスはCD8陽性T細胞が胸腺細胞において増加していたが、われわれの検討ではさらに2-3ヵ月後より自己免疫疾患様の皮膚炎に加え、遅延型過敏反応に代表されるTh1型の炎症性変化の増強、また驚いたことに実験性自己免疫性脳脊髄炎における症状の著明な減弱といったCD4陽性T細胞に起因すると考えられる変化を野生型マウスに比較して認めた。このメカニズムを解明するために抑制性T細胞とTh17細胞の解析を行なった。抑制性T細胞の機能はSOCS-1欠損CD4陽性T細胞において正常に保たれており、抑制性T細胞の主要な転写因子であるFoxp3の発現及び誘導は野生型と比し変化は、認められなかった。一方in vitroのTh分化実験において、SOCS-1欠損T細胞はTh1細胞への分化が促進し、逆にTh17細胞への分化は著明に抑制されていた。抑制性T細胞とTh17細胞の分化には、抑制性サイトカインであるTGF-βと炎症性サイトカインであるIL-6のバランスにより生じていることが知られており、SOCS-1の欠損によりT細胞のTGF-β、もしくはIL-6に対する感受性が変化している可能性が考えられる。われわれはこれらのサイトカインの下流に存在するとされるシグナル分子について詳細に検討した。TGF-βに対するCD4陽性T細胞におけるSmad-2のリン酸化は変化を認めなかったが、TGF-βとIL-6共添加時におけるSTAT3のリン酸化がSOCS-1欠損CD4陽性T細胞において著明に減弱している一方、SOCS-3の発現が増強していた。この変化は、Th17細胞の維持・増殖に重要とされているサイトカインであるIL-23による刺激においても同様であった。以上のことより、SOCS-1のCD4陽性T細胞における欠損はTh1/17の分化において重要な役割を果たしており、STAT3の活性化の変化がその原因のひとつであることが考えられたが、さらに詳細な解析が必要である。
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