2010 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症の臨床に有用なバイオマーカーの探索と確立に関する研究
Project/Area Number |
18109009
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山村 隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・免疫研究部, 部長 (90231670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒浪 利昌 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・免疫研究部, 室長 (60435724)
三宅 幸子 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・免疫研究部, 室長 (50266045)
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Keywords | 神経科学 / 脳神経疾患 / マイクロアレイ / 免疫学 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)は、中枢神経抗原を標的とする自己免疫疾患であると考えられている。本研究の目的は、MS及び関連疾患の診断、病勢判定、治療効果判定に有用なバイオマーカーを確立することである。今年度同定したバイオマーカー候補は、(1)MS関連疾患である視神経脊髄炎(NMO)診断における形質芽細胞頻度(PNAS,2011)、(2)MS診断におけるCCR2陽性CCR5陽性T細胞の髄液への集積(論文投稿中)、(3)IFN-β療法およびIFN-βと経口ステロイド併用療法の効果判定におけるKi-67陽性NK細胞頻度(論文投稿中)の3種類である。(1)NMOは選択的に視神経と脊髄が冒されるMSの一病型と考えられてきたが、NMO患者末梢血血清中に抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)が存在することが報告された。我々は、NMO末稍血において形質芽細胞というB細胞亜分画の頻度が、MSや健常者と比べて有意に高いことを見出し、形質芽細胞が主要な抗AQP4抗体産生細胞であることを明らかにした。現在NMOの診断には抗AQP4抗体の測定が必須であるが、測定可能な施設は国内でもごく限られており、形質芽細胞の頻度は、NMOおよび抗AQP4抗体陽性患者の補助診断手法として今後重要になると考えられる。(2)昨年度、4種類のケモカイン受容体により同定されるT細胞サブセットのうち、CCR2陽性CCR5陽性T細胞のみがMS再発時に髄液へ集積することを報告したが、今年度はMS、非炎症および炎症性神経疾患に解析対象を拡大した。そこでも当該T細胞分画の髄液への集積が、MS特異的に認められた。さらにMS患者の当該T細胞は、髄鞘蛋白特異的なサイトカイン産生を示した。以上より、CCR2陽性CCR5陽性T細胞の髄液への集積は、MS再発の重要なバイオマーカーであると考えられる。MSの再発は臨床症状、MRI、髄液検査を総合的に判定されるが、いずれも医師の技量と経験に依存する部分が大きく、CCR2陽性CCR5陽性T細胞の頻度増加を確認することによって、MSの診断がより確実になり、診断的意義が高いと考えられる。(3)我々は以前よりMS診断におけるNK細胞関連バイオマーカーの有用性を報告しているが、今回はIFN-β或はIFN-βと経口ステロイドの併用治療中の患者において、Ki-67(分裂細胞マーカー)陽性細胞の頻度の有意な増加を認めた。IFN-βによるKi-67発現増加の意義は未だ不明であるが、今回測定したコホートにおいては、いずれの治療も再発抑制効果を認めたことから、Ki-67陽性NK細胞がIFN-βあるいはIFN-βと経口ステロイドの併用療法の効果判定バイオマーカーとなり得る可能性がある。
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Research Products
(13 results)