Research Abstract |
平成20年度は,状態遷移モデルに基づいた人間の運転操作モデルの構築について,モデルの精緻化と実装,およびモデルによる人間の操作の再現性に関する評価・検証を行った.モデルの精緻化にあたっては,既に確立した参加型モデリングのプロセスに則った運転操作ログに基づくモデル構築において,ノイズデータの除去と共に,人間の感情・感覚に基づいた無意識的な操作の除去を徹底的に行い,運転操作モデルによって再現する行動の質向上を図った. 本研究でのモデル構築における目標は,人間行動の個別性の再現にある.そのためには,モデル化対象の人間の運転操作に関する十分な情報が必要だが,意図的でない運転操作,つまり論理的な理由も無く操作を行る事が多く,そのような無意識の運転操作に関しては,運転者当人からであっても,運転操作を説明するための情報(知識)を抽出することが難しく,モデル構築において,知識量の不足という困難を生じさせる,そこで,他の運転者から抽出した知識を補完的に用いる,運転者横断的な先験的知識利用によるモデル構築のアプローチを採った.すなわち,モデル化対象の運転者から抽出した知識のみでのモデル構築が不可能である場合,他の運転者から抽出した知識を用いてモデル構築を継続させる.本アプローチは,対象の運転者から得た知識と,他の運転者から得た知識によるハイブリッドな運転者モデルの構築を実現する事になる. ハイブリッドなモデルによって,行動の個別性を表現できるかが検証のポイントとなる.そこで,人間の運転操作と,得られたモデルによる運転操作の比較を実施した.走行速度の変遷に関する相関,および走行速度帯に関して比較を行い,多数のモデルにおいて人間の運転操作との間に十分な相関が得られることを確認した.また,速度に関する相関が比較的低い場合においても,高頻度でアクセルを利用するなどといった運転スタイルの再現が可能である事を実験的に証明した.
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