2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18200021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 真也 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (50273850)
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Keywords | システム生物学 / ERK / シグナル伝達 / シミュレーション |
Research Abstract |
ERK経路は極めて多彩な生命現象を制御する。このように同じ分子ネットワークを用いて異なる作用を制御する点がシグナル伝達機構の本質的な特徴である。例えば,PC12細胞では同じERK分子が一過性あるいは持続性に活性化することで,それぞれ細胞の増殖あるいは分化という異なる細胞運命を導く。私たちは,すでに増殖因子刺激の投与速度と濃度精報がそれぞれ一過性および持続性のERKの活性化に変換されることを見出している。本研究では,上記概念を発展させて,刺激の時間パターン情報を,ERKの活性化へ変換して細胞の増殖や分化といった異なる応答を制御するコードメカニズムを明らかにすることを目的とした。EGFによる増殖の効果は当初期待されていたほど顕著でなく,細胞周期の同調がうまく行っていないためであることが明らかとなった。そこで,本年は,細胞周期の厳密な同調の系の開発を試みた。その結果,EGFによるERKの一過性活性化と細胞増殖の関係を明確にできる系の開発に成功しつつある。この系を用いれば,一過性,持続性単独およびその両方のERKの活性化によりそれぞれ特異的に誘導される遺伝子群をマイクロアレイを用いてスクリーニングが可能となる。また,NGFramp刺激では,同終濃度のstep刺激の結果と比較して,検討した全ての濃度条件で伸展が低くなった。また,impulseおよびramp刺激で,それぞれ一過性,持続性のみのERK波形も確認した。したがって,これらの結果は,細胞分化にはERKの一過性と持続性の両方が重要であることを示唆しており,従来考えられていたより複雑なデコードシステムの存在が示唆された。したがって,従来の微分方程式モデルでなく,時間波形に基づいたモデル化手法である統計モデルの構築を試みている。
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