2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18200021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 真也 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (50273850)
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Keywords | システム生物学 / ERK / シグナル伝達 / シミュレーション |
Research Abstract |
ERK経路は極めて多彩な生命現象を制御する。このように同じ分子ネットワークを用いて異なる作用を制御する点がシグナル伝達機構の本質的な特徴である。例えば、PC12細胞では同じERK分子が一過性あるいは持続性に活性化することで、それぞれ細胞の増殖あるいは分化という異なる細胞運命を導く。本研究では、ERK経路のシステム生物学に関して、ERK経路による細胞の増殖と分化のスイッチ機構を、実験と数理モデルのどちらも踏まえてシステム生物学手法により解析を行った。まず、PC12細胞におけるNGFの刺激パターンによる分化応答の計測を行い、PC12細胞の神経突起伸張過程は、およそ12時間の突起伸張準備期間とその後の突起伸張期間にわけられることを見出した(プライミング現象)。このプライミング現象にかかわるシグナル伝達経路の同定およびプライミング期間中に誘導される遺伝子の同定を行った。突起伸張準備機構は、ERKの活性と転写活性を必要とし、突起伸張機構は、ERKとPI3Kの活性を必要とすることを見出した。PC12細胞の神経細胞への分化は、時間的に分離された、非連続的なプロセスにより誘導されることを初めて明らかにした(Chung,2010)。以上から、突起伸張準備機構は、持続的ERK活性化のデコーディング機構に該当すると考えられ、関連遺伝子の同定を試みた。その結果、マイクロアレイ実験により、約50の遺伝子が同定された。その内約30の遺伝子を、siRNA実験により調べた結果、7つの遺伝子(Serpinbla, Neu2, Tph1, Ania4, Trib1, PVR, RGD1305778)が突起伸張に重要と思われた。これら遺伝子は持続的ERK活性化に特異的に応答し、神経分化の初期過程である、突起伸張準備にかかわると期待される。現在、これらの遺伝子群を応答としたモデル化を行っている。また、遺伝子群の時間波形を取得している過程で手動を自動化することができる可能性が判明したため、ERKによる下流の遺伝子群の時間波形計測を自動的に高速に計測する手法を開発に成功した(Ozaki, in press)。この計測手法を用いてERKとその下流の初期応答遺伝子群産物の時間波形を計測して、自己回帰モデルによる解析して、準備的に時間情報コーディングメカニズムを明らかにしつつある。
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Research Products
(5 results)