Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦川 秀敏 東京大学, 海洋研究所, 准教授 (90370262)
小川 浩史 東京大学, 海洋研究所, 准教授 (50260518)
河原林 裕 独立行政法人産業技術総研究所, セルエンジニアリング研究部門, 主任研究員 (90195165)
千浦 博 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (00103698)
常田 聡 早稲田大学, 先進理工学部, 教授 (30281645)
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Research Abstract |
本研究の目的は,海洋中深層に広く分布する古細菌群集の生態および機能を最新の方法を用いて明らかにすることである。機能としてとりわけ窒素代謝に注目し,比較検討のために水族館などの人工的条件下で生息する古細菌についても解析を行い,それらを統合して古細菌の機能を解明することを目指した。研究の第一の軸として外洋の鉛直的な群集構造の変化様式を,真正細菌のそれと比較しつつ明らかにした。第二に,その機能を明らかにするため,外洋の海水に安定同位体でラベルした基質を添加して培養を行い,その後DNAを抽出して遺伝子解析を行い,どの菌群がこれらの添加基質を取り込んだかを解明した。第三に,水槽内のアンモニア酸化性の古細菌の群集構造に与える温度の影響を調べることにより,これらのグループが天然環境中でどのような分布および機能を持つかについて考察した。これらの結果,第一に群集構造の鉛直的な変化パターンには古細菌と真正細菌の間に違いがあり,これは利用可能な対象有機物の違いを反映しているものと推定した。第二に,炭酸の取り込みが古細菌のいくつかのグループで確認されたことから,深層の古細菌の中には独立栄養性のグループがいることが確実になった。第三に,低温環境下ではアンモニア酸化細菌の群集構造が単純化することから,温度が古細菌の群集構造を規定する要因として無視できないことが明らかになった。以上の結果から,古細菌は真正細菌と異なって,外洋深層に特徴的な低栄養有機物環境に適応,進化したグループであること,さらにそうした環境に生息する古細菌の中には,アンモニア酸化細菌に代表されるような,独立栄養性の栄養様式を獲得しているものがいることが明らかになった。
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