2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射線発がんプロセスにみられる遺伝子変異と発がん宿主要因の遺伝解析
Project/Area Number |
18201009
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
木南 凌 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40133615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三嶋 行雄 新潟大学, 医歯学系, 助教授 (30166003)
葛城 美徳 新潟大学, 医歯学系, 助手 (60401759)
小幡 美貴 新潟大学, 医学部, 教務職員 (00420307)
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Keywords | がん / 電離放射線 / 遺伝学 / シグナル伝達 / Bcl11b遺伝子 |
Research Abstract |
1.放射線4回分割照射後40日-100日の萎縮胸腺で大型リンパ球が出現する。この細胞はVDJ組換えパターンの単一性を示し、クローナル増殖が示唆されるため、リンパ腫前駆体細胞の候補と考えられる。照射後7日の萎縮胸腺でも大型の細胞が観察され、この大型リンパ球はBrdUの細胞内取り込みを盛んに行なうが、照射後80日のそれは取り込み活性が低い。両者の関連性を明らかにする必要がある。発がん感受性遺伝子アレル(約3MbpのMSMマウス由来MTF-1遺伝子座領域)をもつヘテロ型マウスとMSMホモ型の抵抗性マウスの照射後7日の胸腺を解析した。感受性マウスは抵抗性に比べ、大型リンパ球を多く胸腺内に存続させることが分かった。この大型リンパ球は高いROSをもつため、DNA変異を蓄積する可能性が高く、この差が発がん感受性を担うと考えられる。同様の実験を、発がん感受性を与えるBcl11bがん抑制遺伝子のヘテロ型マウスを用いて検討したが、Bcl11b遺伝子型の違いでは大型リンパ球の占める割合に影響を示さなかった。照射後の大型リンパ球の存続はMTF-1発がん感受性遺伝子にみられる現象であることが分かった。 2.ヒト大腸がんでは第14番染色体上のBcl11b遺伝子座で高頻度にLOHが観察される。これは大腸がんの発症にBcl11b遺伝子が関与する可能性を示唆する。そこで、MinマウスとBcl11b-KOヘテロマウスを交配し、Bcl11b遺伝子型の違いによる大腸・小腸がん発症への影響を調べた。生後18週で観察した腫瘍数はBcl11b遺伝子型の違いにより影響を受けた。すなわち、Bcl11b遺伝子が野生型のときは8個体の平均腫瘍個数が6.0であるのに対し、ヘテロ型8個体の平均腫瘍個数は14.5と有意に上昇していた。しかし、腫瘍の平均サイズはどちらも1.21mmであり、一つのBcl11b遺伝子に欠損があると腫瘍発生の頻度を上げるが、腫瘍形成の進展を早めることはない、ということが示唆された。
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