2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝毒性物質の閾値形成におけるトランスリージョンDNA合成の役割に関する研究
Project/Area Number |
18201010
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
能美 健彦 National Institute of Health Sciences, 変異遺伝部, 部長 (30150890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増村 健一 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 主任研究官 (40291116)
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Keywords | 遺伝毒性の閾値 / 有害化学物質 / 遺伝子 / 環境 / 癌 |
Research Abstract |
ヒトゲノムは、絶えず内因性、外因性の遺伝毒性物質に曝露されており、損傷を持ったDNAを鋳型にして行われるDNA複製は突然変異や染色体異常を誘発する。DNA損傷に基づく遺伝毒性を回避するため、ヒト細胞にはDNA損傷部位を乗り越えて複製を続ける特殊なDNAポリメラーゼが備わっている。このDNA損傷部位を乗り越えて進むDNA合成はトランスリージョンDNA合成(TLS)と呼ばれ、TLSに特化したDNAポリメラーゼはTLS型DNAポリメラーゼと呼ばれる。本研究では、ヒトTLS型D酷ポリメラーゼの一つであるDNAポリメラーゼκ(hPolκ)の生化学的解析を進めるとともに、同酵素の活性を特異的に不活化させたノックインマウスおよびノックインヒト細胞株を樹立することにより、低用量域での遺伝毒性発がん物質の閾値形成にTLSがどのように関与するかを明らかにすることを目的としている。 平成20年度は(1)hPolκのphenylalanine 171をalanineに置換した変異体(F171A)の性状を解析し、鋳型鎖のbenzo[a]pyrene diolepoxide(BPDE)adductの向かい側に正しいdCMPを挿入するF171Aの活性が、野性型酵素よりも20倍以上高いことを明らかにした。(2)Polκの198番目のaspartic acid(D198)と199番目のglutamic abid(E199)をalanineに置換したノックインマウス(D198A/E199A)と変異検出用のレポーター遺伝子を持つgpt deltaマウスを交配した。ノックインマウスとPolκ野性型マウスの遺伝毒性物質に対する感受性の比較を開始した。(3)ヒト細胞株Nalm-6のhPolκ遺伝子(POLK)を完全欠失させた変異株と、hPolκにD198A/E199A変異を導入した株、および野性型株の遺伝毒性物質に対する感受性の比較を進めた。(4)遺伝毒性発がん物質の閾値に関する国際シンポジウムを開催した(招へい講演者、国外5名、国内16名、参加者約200名)。
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Research Products
(43 results)