2008 Fiscal Year Annual Research Report
医療におけるリスク・患者安全管理の確立:患者視点の導入と安全文化・学習文化の醸成
Project/Area Number |
18201029
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 謙治 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (80159871)
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Keywords | 安全文化 / 患者安全 / リスク管理 / ヒューマン・エラー / インシデント・レポート / 国際比較 / 報告文化 / 患者調査 |
Research Abstract |
本年度は、我が国の医療現場における安全文化の特徴、およびそれに影響を与える要因を明確にするために、安全文化に関する国際比較研究を実施した。これとともに、医療安全に対する患者の認識・要望に関する調査(「患者調査」)を行い、詳細に分析した。これらの調査に対する国際的な研究動向を特に、この分野の先進国であるヨーロッパを中心に行った。以下、本年度に実施した研究成果に関する具体的な内容を記述する。 (1)医療安全文化に関する国際調査の実施:これまでと同様の安全文化に関する調査票(中国語版)を用いて、中国・上海の病院の医師、看護師、薬剤師、医療技術系職員から調査データを得て、我が国と中国の医療安全文化の国際比較を行った。この結果、権力的距離は日本の医療組織の方が小さく、コミュニケーション、ストレスの影響、ストレスの管理の重要性などに対して、我が国の医療者の方が中国より現実的に認識しているなど、それぞれの国の医療安全文化の特徴が明確になった。 (2)医療安全に関する患者調査:医療事故・ミスをおかした医師に対する患者の見方、そして医療者に対する患者の要望を、複数の病院の入院・外来患者へのアンケート調査により明らかにした。さらに、インタビュー調査などにより、これらの患者の認識・見方に影響を与えている背景要因を明らかにし、特に患者の医療者に対する見方はマスコミ報道の内容を強く反映しているが、この5年間で医療者に対してポジティブな方向に変化していることがわかった。 (3)医療安全文化、医療制度の国際比較調査:我が国の医療現場における安全文化の特徴を明確にするため、ヨーロッパ、特にデンマークを中心にインタビュー調査、文献調査等を行い、医療制度、医療の実施形態の安全文化形成への影響を考察した。特に、日本とこれらの欧州各国の医療安全、ならびに安全文化の考え方、制度などの違いなどが明確になった。
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