2008 Fiscal Year Annual Research Report
マウスES細胞の分化調節機構に関する機能プロテオミクス研究
Project/Area Number |
18201039
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
礒辺 俊明 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 教授 (70106607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 信弘 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (80293017)
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Keywords | プロテオーム / 発生・分化 / 幹細胞 / 機能プロテオミクス / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
本研究では、質量分析法を中心とする最新のプロテオミクス技術によって、マウス胚性幹細胞(ES細胞)で機能しているタンパク質のダイナミクスを大規模に解析し、その細胞生物学的な特質と分化調節機構に関する基本的な理解を深めることを目的とした。これまでの研究で、ES細胞の形質を維持したまま細胞が合成するタンパク質をまるごと安定同位体で代謝ラベルする実験系を確立し、この標識細胞にレチノイン酸を加えて分化誘導した時に観察されるプロテオームの変動をショットガン解析することで、約4,000種類のタンパク質の発現プロファイルを定量的に解析した。また、これらのタンパク質の中から特にES細胞のクロマチン分画に存在する機能未知のタンパク質10種類を選択し、その細胞内局在を明らかにするとともに、過剰発現系あるいはsiRNAによる発現抑制系を用いた解析によって、これらの成分がES細胞の未分化維持機構に関わっている可能性を検討した。本年度の研究では、これらの遺伝子の発現をテトラサイクリンで制御できるES細胞株を作成し、分化誘導刺激を加えた際の表現型などを観察したところ、少なくとも2種類のタンパク質(A,B)が特異的にES細胞にアポトーシスを誘導することがわかった。これらのタンパク質はいずれもPumilioドメインをもつRNA結合タンパク質であった。さらに従来の研究やエピトープタグを利用したタンパク質相互作用解析の結果から、タンパク質A,Bはいずれも細胞のリボソーム生合成初期のrRNA先駆体のプロセシングや修飾などに関わるトランス因子であることことがわかった。以上の結果から、ES細胞の分化調節にはリボソーム生合成系の制御が不可欠であることが推定された。今後は、その確認とともに、この現象の特異性や分子機構の解明が重要である。
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