Research Abstract |
1.本研究は,精神医療関係者と法学研究者との完全な共同研究によって,(1)心神喪失者等医療観察法(以下,「医療観察法」)の理念と構造とを検討し,(2)本法の施行状混のモニタリング調査を実施し,本法施行後5年後の見直しに向けて,(3)本法における法理論上の問題とその実際の運用における問題点について,医療現場の実情をも踏まえて,具体的かつ実現可能な提言を行うことを目的としている。この目的を達成するために,本年度も,昨年度と同じく,研究代表者,分担研究者,研究協力者による,研究会を8回開催し,各専門分野の講師を招いて,医療観察法における法理論的問題点およびその実際の運用上の問題点を検討した。また,昨年に引き続き,プライヴァシーへの慎重な配慮のもとに,法律家,医師,コメディカル,行政・司法関係者,を交えて行った事例研究は,医療観察法の実際の運用における問題点を共有する意味で,大変有意義なものであった。 2.昨年度,本研究では,責任能力とリンクしない保安処分システムを有し,リスク評価を基礎とした,重大な他害行為行った精神障害者の処遇を行っているスイスの法制度について,比較法的調査・検討を行った。そこで,本年度は,スイスの法制度を類似点の多いドイツにおける,重大な他害行為を行った精神障害者の処遇に関する法制度とその実際の運用および鑑定制度などについて,詳細な比較法的調査・検討を行った。 3.以上の研究活動の成果を踏まえて,研究の最終年度である来年度も,研究代表者,分担研究者,研究協力者による,研究会を開催し,医療観察法の見直しに向けて,わが国の精神医療および法制度において受け入れ可能な具体的な提言をまとめる予定である。
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