2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18203013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
国友 直人 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (10153313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市村 英彦 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50401196)
高橋 一 一橋大学, 経済学研究科, 教授 (70154838)
大屋 幸輔 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20233281)
大森 裕浩 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (60251188)
澤田 康幸 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (40322078)
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Keywords | パネル計量経済モデル / プログラム政策評価 / ミクロ計量経済分析 / ノンパラメトリック実証分析 / 産業組織 / ミクロ金融市場 / 開発経済 |
Research Abstract |
この研究プロジェクト「ミクロ計量経済学の新展開と実証分析」ではミクロ計量経済学の理論と応用に関する最近の研究の展開を踏まえ、理論面と実証面の両面より研究活動を行っている。2006年度は研究プロジェクトの初年度でもあるので、今後の研究計画の推進を見据えて比較的基礎的な内容の研究を行った。 ミクロ計量経済学の理論的研究は国友、市村、高橋、大森を中心に研究を進めている。このうち、国友は主としてパネル・ミクロ計量経済分析における様々な問題、市村はプログラム政策評価とノンパラメトリックな計量経済分析の方法、高橋はミクロ金融市場の計量分析の問題、大森はベイズ・ミクロ計量分析の方法について検討を行い、既に幾つかの未公刊論文、Discussion Paperを執筆した。具体的成果としては、大森は、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた計量経済モデルについて幾つかの提案を行った。先ず、確率的ボラティリティ変動モデルにおいて、レバレッジ効果を取り入れたモデルの非常に効率的な推定方法を開発・提案したが、このモデルを含むより一般的な非線形状態空間モデルにおいて、効率的な推定方法をどのようにするべきかについても検討した。また労働経済学などで頻繁に用いられているサンプル・セレクションモデルについて、通常のギブス・サンプラーによるサンプリングが非常に非効率的であることを示し、これを簡単に改善する方法も提案している。 一方実証面では市村、大屋、大橋、澤田がそれぞれが関心を持っている研究分野において実証分析を進めているが、市村は労働のノンパラメトリック実証分析、大屋はミクロ金融市場の理論的・実証的分析、大橋は産業組織(特に鉄鋼産業)の経済成長の要因分析、大森は公益事業(特に水道の需要と料金政策の評価)分析、澤田は開発経済の計量分析を進めている。具体的な成果としては、大屋は、証券市場のマイクロデータでもある大量の日中データの統計処理に関する研究を行い、従来から指摘されている推定量の不安定性が観測誤差によるものであることに着目、複数系列間の共分散、ないし相関の推定量が不偏推定量となるかどうかに関する検定統計量が提案した。また、モンテカルロ実験によって、サイズ、検出力ともに実際の利用において問題がないことを確認した。大橋は生産関数の推計に基づいたシミュレーション分析により、日本企業がもし転炉を導入せず旧技術の投資のみを行なっていたならば、鉄鋼産業の成長は5%ほどだったことを発見した。以上で述べた昨年度の研究経過を総括すると、本研究計画により順調に研究成果が生み出されていると云えよう。各研究者は既に幾つかの未公刊論文、Discussion Paperを執筆しているが、今後各自が所属する学会等で研究報告を行う予定である。
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