2008 Fiscal Year Annual Research Report
発達移行期の不適応行動に関する発達精神病理学的研究:マルチコーホートの追跡から
Project/Area Number |
18203034
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
菅原 ますみ Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (20211302)
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Keywords | 生涯発達 / 不適応行動 / コーホート研究 / 発達精神病理学 / 発達移行期 |
Research Abstract |
子どもたちの健やかな心の発達を保障していくためには、その発達過程において、いつ、どのような不適応的な精神症状や問題行動が、どのようなメカニズムで発現し、どういった介入(treatment)によってそれらを適切な方向に動かしてさらなる発達につなげていくことができるのかを科学的に解明していくことが必要である。子ども期を含め人の一生のなかで出現する多くの精神疾患や問題行動にはその発現要因として環境ストレスが深く関与しており、個体側の持つ素因的脆弱性(vulnerability)との交互作用によってそれぞれの発現危険性が増減する。とくに入園や入学、就職などの発達的移行期(developmental transition)にはどの子にも新しい環境への再適応が必要とされ、不適応的行動発現のリスク期と位置付けられる。本研究では、乳児期から成人前期に至るまでの各発達移行期について各発達移行期を網羅する複数のコーホートサンプルを追跡して同一の発達精神病理学(developmental psychopathology)的な測定・分析パラダイムによって検討することにより、各移行期での環境要因と不適応発現の因果関係を同定し、リスクをより健やかな発達につなげるためにはどのような条件が必要なのかを子ども期全体を通じて明らかにすることを目的としておこなわれている。 平成20年度は、以下2つの追跡調査を実施した : (1)長期縦断成人前期コーホート(23〜25歳277名、これまでに妊娠期から13回の調査を完了してきたサンプルで、今回が14回目の追跡調査となった)に対する郵送質問紙調査(父親、母親、対象の青年)およびライフヒストリーと精神科診断のための面接調査(父親、母親、対象の青年で計130名)を実施した。面接調査は現在も継続中である。(2)乳幼児期コーホート(本研究終了年に小学校1年生となる5〜6歳児420名)の年長時点での追跡調査(誕生時より5回目の縦断調査で、全サンプル対象の郵送による質問紙調査とうち140家庭を対象とした家庭での知的発達に関する検査や母子相互作用の録画などを実施した。
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