Research Abstract |
本研究は,基線長100mの神岡レーザー干渉計CLIOに,観測装置として必須であるデータ収録,解析装置を組み込み,天の川銀河内で発生する重力波イベントをとらえるために長時間連続観測を行うことを目標とする。人的活動に起因する外来雑音も小さな地下環境では,地表検出器には不可能と思われる良質なデータが蓄積できることが最大のメリットである。非常に微弱な重力波イベントは,通常は地面振動などの様々な雑音にかき消されたり,またはパルス状の外来雑音と区別できないからである。 平成19年度は,主にミラーを冷却した状態でレーザー干渉計の感度向上を行った。ミラーを冷却するためには輻射熱を抑えなければならないが,その輻射シールドの形状が不適当なものであると,散乱光を媒体として外来振動を拾いやすくなり,結果的に感度が悪くなる。約半年間にわたり輻射シールドを改良することで,十分にミラーを冷却し,かつ外乱に対して強くすることができた。また,入射光学系の光軸を自動的に補正する制御系を組み込んで,長時間安定性を確保した。さらに,干渉計制御にオートロックシステムを導入し,無人でも連続に動作するようにした。 以上の準備の下で短期間のテスト観測を行い,57時間の観測データを取得した。このデータを使用して,べらパルサーからの連続重力波に対する解析を試験的に行った。べらパルサーのスピン周波数は11Hzといっ低周波であるため,今までほとんど解析が行われていなかったからである。この解析により,べらパルサーからの重力波に対して上限値をえることができたとともに,データ取得装置も正常に動作し,重力波観測が可能であることが確認できた。
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