Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 孝至 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (00192617)
宇田川 眞行 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (70144889)
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教授 (10223596)
島田 賢也 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教授 (10284225)
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Research Abstract |
希土類及びII族元素を内包したクラスレートの単結晶を育成し,熱電物性,ラマン散乱,超音波,中性子散乱などの実験から以下のような新しい知見を得た。 1)Ba_8Ga_<16-x>Ge_<30+x>とBa_8Ga_<16-x>Sn_<30+x>の熱伝導率は電荷キャリアの正負に強く依存する。n型では約20Kに山を持つのに対してp型は山を持たず絶対値が小さい。その原因はp型ではBaの局在的振動とカゴの音響フォノンとの結合強度が強く,さらにトンネル状態密度が高いためである。Ba_8Ga_<16-x>Sn_<30+x>では従来のVIII型に加えてI型構造の存在を見出し,後者の結晶構造と原子変位パラメータを決定するとともに,光電子分光で電子状態を調べた。この系の熱伝導率は既知のI型クラスレートのうちで最も小さいので,非中心運動をミクロな手段で調べるための典型物質と位置付けられる。 2)ラマン散乱によって,上記のp型ではBa原子がカゴの中心からずれた位置を振動していることを見出し,非中心の非調和振動が音響フォノンを共鳴的に散乱すると結論した。 3)超音波実験によって,Ba_8Ga_<16>Sn_<30>とSr_8Ga_<16>Ge_<30>ではC_<44>モードの弾性率,Eu_8Ga_<16>Ge_<30>では(C_<11>-C_<12>)/2モードの弾性率と超音波吸収が,数十Kの温度で周波数に依存することを観測した。この超音波分散は,熱的に励起されたゲスト原子のラットリングに起因する。緩和型吸収モデルを用いた解析によって,それぞれの特性緩和時間や励起エネルギーを決定した。 4)中性子散乱によってフオノン分散を調べ,ゲストの振動モードはカゴの音響フォノンモードと反交差することによって弱い波数依存性を示すことを見出した。これは隣同士のゲスト原子が独立したアインシュタイン振動しているという描像とは矛盾する。温度低下に伴うSr_8Ga_<16>Ge_<30>のゲストモードのソフト化は非調和性が強いことを意味する。
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