2007 Fiscal Year Annual Research Report
回転超流動ヘリウム3の流体力学-超低温におけるミニチュア初期宇宙-
Project/Area Number |
18204034
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河野 公俊 The Institute of Physical and Chemical Research, 河野低温物理研究室, 主任研究員 (30153480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋元 彦太 研究技術開発, 支援チーム, 開発研究員 (60202545)
高橋 大輔 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 基礎科学特別研究員 (80415215)
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / 回転 / 量子渦 / 境界条件 / 2次元電子 / 2次元超流動 / 超流動薄膜 |
Research Abstract |
超流動3He、特にA相と呼ばれる相では流れと秩序パラメータの関係を記述する方程式がテクスチャーと呼ばれる特有の空間構造に依存し、かつエネルギーギャップが消失する点がフェルミ面上に存在するために散逸の効果が重要となるなど、流体力学的な性質には複雑で多様な要素が存在する。この特異な液体における流体現象には、まだ多くの未知の現象があるが、わずかな研究がなされているに過ぎない。本研究は、超流動3Heの流れを超低温領域で実現し、回転により制御されたテクスチャーのもとで流体力学的な性質を調べることで、超流動3Heと素粒子論との対応について研究することを目的とする。今年度は、ヘリウム表面電子のバンド間遷移にともなうダイナミクスに興味深い発見があり、こちらの研究の発展も図った 今年度は回転冷凍機を用いた量子渦に関する実験と、超流動ヘリウム3薄膜という2次元的な空間の制約を加えることでテクスチャーを制御する実験を行った。回転希釈冷凍機を用いた実験では、液面上の2次元電子に対する量子渦の影響が小さいことが明らかになったので、液面下に蓄えたイオンの伝導特性を調べることに方針を切り替えて、測定の準備を行った。イオンを液体ヘリウム中で電界放出させるために、以前我々が開発したカーボンナノチューブを用いる方法を採用し、試料容器の製作を行い予備的な実験を行った。超流動ヘリウム3膜の流動特性を調べるために、これまで櫛形電極を用いて、電界駆動の方法を開発してきたが、この方法を磁場中で行えるような試料容器を作成し、冷凍機への取り付けを終了した。空間的に閉じ込められたナノスケール領域での流体力学は実用的な重要性もあり、近年急速に注目を集める研究テーマとなっている。超流動ヘリウム3という特異な性質を利用して独創的な研究の展開が大いに期待される。 ヘリウム表面上2次元電子のミリ波励起における量子ダイナミクスの研究により、顕著なホットエレクトロン効果が見出され、非線形な振舞いなど今後の研究の展開が期待される。
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Research Products
(23 results)