2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体高分子の界面吸着が誘起する氷の結晶成長促進・自励振動現象の異方的ダイナミクス
Project/Area Number |
18204036
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20113623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 千仭 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (90002245)
横山 悦郎 学習院大学, 計算機センター, 教授 (40212302)
灘 浩樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 主任研究員 (90357682)
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Keywords | 氷結晶 / 不凍タンパク質 / 結晶成長カイネティクス / 自励振動成長 / FTIR / 界面吸着 / 二次構造 |
Research Abstract |
1)氷の結晶成長を制御する機能を持つ不凍糖タンパク質(Antifreeze Glycoprotein, AFGP)が、氷/水界面に吸着した状態でどのような二次構造を持つかを、全反射プリズムを使ったフーリエ変換赤外分光法により調べた。AFGP分子は、水溶液中ではランダムコイルと呼ばれる構造を持つが、水溶液が凍結した状態ではα-ヘリックス構造を持つ分子の割合が増加した。すなわち、氷/水界面に吸着したAFGP分子がα-ヘリックス構造を持つと考えられる。この結果は、AFGP分子が界面に吸着するためには、二次構造の変化を伴うことを示す初めての結果である。 2)AFGP分子が海面に吸着した場合の、氷結晶成長カイネティクスモデルの構築を行った。AFGPの界面への吸着には、不完全な吸着と完全な吸着の場合が存在し、前者は結晶成長を抑制しないが後者は成長を抑制する。すなわち、AFGPの界面吸着は、階層構造を持つことが示唆された。この様な階層構造が存在すると、結晶成長に伴う自励振動の発生を導く結晶成長カイネティクスモデルの構築が可能になる。 3)氷/水界面に不凍タンパク質タイプI(Antifreeze protein, AFP Type I)が吸着している場合の結晶成長のプロセスの計算機シミュレーションを、分子動力学法により行った。AFP Type Iは、プリズム面からある傾きを持ったピラミッド面にもっとも強固な結合が出来、この場合は氷の結晶成長が抑制された。そのほかの方位の結合では、AFGP分子が氷/水海面の成長に伴って前方に押し出された。すなわち、成長抑制効果が観察されなかった。この結果は理論的考察で予測された吸着状態の階層構造を反映しているものと考えられる。このようなシミュレーションは、本研究が最初の成功例で、AFPが不凍効果を発現するためのメカニズムの解明に極めて有効である。
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Research Products
(3 results)