2006 Fiscal Year Annual Research Report
新しい対称性を示すフォトニック階層構造を"創る・知る・操る"
Project/Area Number |
18204037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 潤 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (10200809)
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Keywords | ソフトマター / 階層構造 / ナノ構造 / ダイナミクス / フォトニック液晶 / マニュピレーション / 等方秩序 / 相互連結構造 |
Research Abstract |
I 研究目的に述べた階層構造の自在なデザイン・試作を実現するため、3つの視点、"創る・知る・操る"に基づいて糸統的な研究を遂行した。 "創る" 本研究課題が解明を目指す、新しいタイプの長距離相互作用とは、複数の構成要素を含むヘテロな混合系においては常に普遍的な力であり、一様な秩序の非整合となる"不純物"の存在によって生み出される、協同現象的な力である。"不純物"の役割を、マルチスケールに包括的に理解するため、模式図に示すように不純物の大きさで分類し、分子、超分子・高分子、粒子の3段階に分けてモデル的な混合系をデザインした。1.分子スケール "等方性スメクティックブルー相"をプロトタイプとして、ダイマー・液晶ポリマーなどをモノマーに混合した系を研究した。2.超分子・高分子スケール このスケールでは、"液晶マイクロエマルジョン"をプロトタイプとし、ミクロ相分離によりできる超分子会合体を、液晶秩序中に分散させた系を探索した。フッ素含有液晶とBLT液晶を主として、ポリエチレンオキサイドを含む、親水性のジブロック共重合体を用いた、ドラッグデリバリーシステム(DDS)について、"KAST横山昌幸ナノメディカルプロジェクト"との共同研究により試料の提供を受け、混合系のモデルを開始した。このDDS用共重合体も、本研究課題の目的に適した性質を持つ分子であり、液晶溶媒と水の3成分混合系の研究を行った。 "知る" "創る"において得られた3つのスケールのモデル系を用いて、階層構造の時空間の特徴を"知り"、その知見をデザインにフィードバックする。ソフトマターの階層構造とは、内部自由度の"運動"と階層的な"構造"間に、密接な関係を持つことが最大の特徴である。本研究課題では、ソフトマターの時空間階層構造の構造と揺らぎを広帯域に調べるために、マルチスケールな測定システムを計画した。既存の広帯域ダイナミクス測定システムに加え、既存施設の透過電子顕微鏡と偏光・位相差顕微鏡に、本研究課題で購入したX線回折測定装置を加えて、広帯域でリアルタイムな空間構造解析システムを構築した。1.分子スケール 純粋な液晶モノマー分子に、化学的には同等な同種分子の、ダイマー・オリゴマー・ホモポリマーを混合した系を基礎的モデルとし、巨視的な構造の変化と内部自由度の運動性との関連を直接的に明らかにした。2.超分子・高分子スケール 上層の階層構造の構造や物性のダイナミクスの研究と、下層の内部自由度の揺らぎの研究の両面から研究を行った。特にこのスケールでは、不純物と母相の構成要素(分子)のサイズが異なるため、双方の運動を分離して測定することを主眼として研究を行った。運動の"凍結"により動的に発生する、長距離相互作用の起源について包括的な理解を突き詰めることができる。
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